2020年6月13日土曜日

Pete Whittaker著 CRACK CLIMBINGを読もう(4) -ハンドジャムを叩き込もう-

CRACK CLIMBINGを読もうシリーズ、第四回にしてようやくジャムをキメます。

ちなみに、第一回はこちら。
https://lowfatclibmer.blogspot.com/2020/05/pete-whittaker-crack-climbing1.html

第二回はこちら。
https://lowfatclibmer.blogspot.com/2020/05/pete-whittaker-crack-climbing2.html

第三回はこちら。
https://lowfatclibmer.blogspot.com/2020/05/pete-whittaker-crack-climbing.html


ピートさんのこの本の解説の順序は、こんな感じになっています。



メインとも言えるサイズに合わせた技術のところを見ると、細いクラックから太いクラックへという順番で書かれています。フィンガーが最初です。しかし、フィンガージャムを学ぶのは、我々にはまだ早いです。例えば、28頁に登場するFinger Bar: Crimped Fingersなんてのを見てましょう。こんな技術を要するセクションが出てきたらそれだけで5.13間違いなし。上級者のみに求められる技術です。そんなフィンガー・クラックの章は無視して、まずは基本のハンドジャムからいきましょう。

ということで、第3章ハンド・クラックです。

ピートさんは、ハンドジャムの基本技術に、StandardなジャムとCrimped Handsがあると言っています。で、オススメはStandardなジャムです。51頁の図46を見ていただくと分かる通り、ポイントはMP関節(先っぽから三番目の関節で、英語ではknuckleと呼ばれるところ)を折り曲げることです。Crimped Handsは53頁の図49を見ていただくと分かる通り、ポイントはMP関節を伸ばして、PIP関節を曲げることです。で、この二つのどちらを基本とすべきかについては論争があって、僕は吉田さんに教えに従ってCrimped Handsを基本としてるのですが、その話は追々することにしましょう。

ジャムを決める手先に注目する前に、まずはこの動画を見てもらいましょう。



この動画は、UKのボルダリング・アイドルであるショッちゃんことショウナ・コクシーがピートさんにクラック・クライミングを教えてもらうという企画です。この当時、ボルダリングのワールドカップにもジャミングが時たま登場していて、ジャミング課題対策を打つという背景があります。ちなみに、日本人ボルダラーがジャミング課題でバチ効きのハンドジャムをキメられずにアダム・オンドラに惨敗した2019年マイリンゲン大会の2年前です。

で、そのショッちゃんの登りですが、見ての通りジャムがキマりません。「レイバック禁止!」って厳しいツッコミを入れられてます。

ショッちゃんはハンドジャムはできるんです。できるんですけど、できないんです。それはどうしてかというと、レイバックの体勢になってしまっているからです。

ここで、第1章の5つのルールのうちの3つ目を見てみましょう。KEEP EVERYTHING IN LINE WITH THE CRACKです。全て(の体のパーツ)をクラックの正面に配置するってことです。63頁の図61がいいお手本です。見ての通り、ハンド・ジャムをキメる両方の手、フット・ジャムをキメる両方の足、そして何より重心であるヘソが、全てクラックの正面に配置されています。これと、60頁の図58を比べてください。図58はコーナーを想定した図ですが、これがフェースに走ったスプリッターだと思ってこの図を見てみましょう。先程のショっちゃんの体制がまさにこれですね。両手と両足はクラックの正面に来ていますが、肝心の重心たるヘソが大きく右に逸れています。これでは、ハンドジャムをキメるのは易しくありません。

ハンドジャムを確実にキメるには、重心たるヘソをクラックの正面に持っていく必要があります。そのために重要なのは、フットジャムです。図58の両足に注目してください。両足は左の壁を蹴っています。その結果、重心たるヘソは右に押し出され、そのために両方の手がクラックに対して正面に入っていかず、ハンドジャムがキマらないのです。そこでまず、フット・ジャムを確実にキメましょう。両足をフットジャムです。そうすると、重心たるヘソがフット・ジャムをキメた両足の真上に来ます。クラックの正面です。そうすると、両方の手はクラックの正面からクラックに入っていき、自然とジャミングをキメる準備が整います。

ということで、ハンドサイズのクラックを登るには、まずはフット・ジャムという話です。KEEP EVERYTHING IN LINE WITH THE CRACK!