2019年12月5日木曜日

3度目のElder Crack & Profit of Doom @Curbar

Profit of Doomのコーナーのムーブがどうしても気になったので、もう一回行ってきた。

西からの強い風が吹いて超寒かったが、防風を強化する事でなんとかなるという学びを得たのは収穫だった。例によってElder Crackにフィックスを張ってアップ。間違ってヘルメットをつけて登ってしまったのでワイドに体がフィットせず、なんかうまくいかなかった。あと、次回はホールドとムーブを限定するともっといいかもしれない。

で、Profit of Doom。前回、あと一歩のムーブが解明されれば全体が繋がるはずとの予感があったんだけど、その一歩を解決して核心部のムーブが全て判明した。かぶったコーナーに体をめり込ませる超おもしろいムーブだった。

寒かったのでムーブ探りは一回で終わりにして、早々に撤収することにした。岩の上で片付けをしながらコーヒーを飲んでいたら、ハイカーに声をかけられてちょっとだけお話をした。そのハイカーはクライマーで、Profit of Doomは10年くらい前に登ったんだけど、その時は核心部のプロテクションはスモール・ワイヤーだったとか。今はメトリウスのパープルが効きそうだよって言ったら、そうかもねと。その部分は粒子が細かくて柔らかい岩で、プロテクションをセットすることでだんだんと広がっているみたい。ここ数日はグリットストーンのクライミングには絶好のコンディションなのに、全然クライマーがいないね、Curbarはbestなのにねって言ってて、ボルダラーは増えてるけどトラッド・クライマーは減っているようだ。それから、Profit of Doomの右となるのJanusはマイクロ・ワイヤーの二本のちょうど間のサイズでどっちもうまくいかなかったんだよねーなんて話も。今はどうなっているだろう?

さて、ムーブはできたけど、リードするかどうか?面白いムーブができて満足してしまったような気もする。

Monk Life f8B+という課題

レスターのOrrin ColeyがMonk Lifeを登ったってことで、UKCにニュースが出てました。
https://www.ukclimbing.com/news/2019/11/two_font_8b+s_for_orrin_coley-72121

Monk LifeはNorthumberland(ノーサンバーランドもしくはノースアンバーランド)のKyloe-in-the-Woodsというエリアにある課題です。Kyloe-in-the-Woodsは林業を営む私有地にあって、雰囲気は奥多摩の杉林の中の岩場のような感じです。池田フェイスを思い浮かべていただければ大体の雰囲気は分かっていただけるでしょう。7Aから7Cあたりの課題が豊富で、The Yorkshiremanあたりが人気みたいです。

初登は2003年Malcolm Smith。最近はワールドカップで地味に活躍しているウィル・ボッシも16歳の時に登っています

動画がいくつかあるので、見てみましょう。


Monk Life from Ben Freeman on Vimeo.



Monk Life, Font 8b+, Kyloe from Nigel Callender on Vimeo.



malcolm smith - monk life from beastmaker.co.uk on Vimeo.


マルコム・スミスの圧倒的な力を見て取る事ができます。その秘密は、こんなところにあるようです。



こちらの記事も参考に。
https://www.theprojectmagazine.com/features/2017/2/14/interview-malcolm-smith

2019年12月2日月曜日

2度目のElder Crack & Profit of Doom @Curbar

この前ぶら下がってムーブを探ったProfit of Doomが気になって、もう一回行ってきた。

まずは前回登ったElder Crackにフィックスを張って、トップロープでアップしたが、これはいい。ワイドクラックは全身運動。芯から体が温まる。

それから、Profit of Doom。今回は核心の上部だけじゃなくて下からやってみた。一見したところ、一箇所だけハンドジャムが決まりそうだけど、そのほかにはホールドがないかぶったコーナーで、結構難しいんじゃないかと思ってたら、やっぱり難しかった。カンテにニーバーをかけて、コーナーに両足をスタックさせて、隠れたクラックに変則的なジャムをキメて、と超おもしろい感じだった。しかし、コーナーが閉じているのでプロテクションが不安。グラウンドフォール注意。

核心の上部は未だムーブが不明。出だしとフィニッシュはわかるけど、その間でどうやってステミングの足を二歩上げるか。もう一回行かないと。


2019年11月19日火曜日

Elder Crack & Profit of Doom @Curbar

ずーーーーーっと天気が悪かったんだけど、久々に快晴が期待された一日、トラッド・クライミングをやりに行った。

向かった先はCurbar。狙いは、Elder Crackのオンサイトと、Profit of Doomのムーブ探り。

ちなみに、Curbarは、StanageとかBurbageと同じく、ピークディストリクトの東側に位置するEaster Gritと総称される岩場の一部だ。有名どころは、北から順番に、Stanage、Burbage、ちょっと脇にMillstone Edge。少し離れて、Froggatt、Curbar、Baslow、ちょっと東にずれてGardom's、Birchen、その南にChatsworth Edge。

Profit of Doom

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=11077

娘を学校にドロップした後に岩場に向かった。Elder Crackの取り付きにはクライマーが二人いて、ご挨拶。二人ともElder Crackを登るようで、セラバンドで入念なウォーミングアップをしていた。時間がかかりそうだったので、先にProfit of Doomのムーブ探りをすることにした。

Froggatt、Curbar、Baslowは、Derwent Riverが削り取ってできた大きな谷の最上部に残された幕岩だ。その上はほぼフラットなMoorが広がっていて、数キロメーター続く岩場の上部には木は一本も生えていない。もちろん終了点のボルトはない。したがって、このエリアでのクライミングはトップ・アウトした後にナチュラルプロテクションでアンカーを構築してフォローを迎えて初めて完結する。ラペルでムーブを確認する際には、逆に最初に岩の上部でアンカーを構築するところから始めてロープをフィックスしないといけない。そして僕はそれが苦手だ。

まずは最上部にカムをセットして、そこから短いロープを使ってアンカーを伸ばし、少し下がったところにさらにカムをセットして、そこでイクオライズしてラビット・ノットを作ったロープをセットして完成。少々慎重にすぎるんじゃないかと思うんだけど、怖がりの僕にはこれくらい必要。次の問題は、岩のエッジをどうやって回避するか。リップの上の平坦な部分にアンカーを構築するので、ロープがエッジにかかることは不可避。そして、グリット・ストーンの質感は大根おろしみたいなものなので、ロープに荷重をかけるたびに、ロープが左右に振られるたびに、ジャリジャリとロープが削られる。今回は雑巾をエッジに被せることでごまかした。

この複雑な過程を僕の脳は十分に理解できていないようで、特にエッジに削られるロープへの不安が大きくて、ロープに体重をかけて動くことに恐怖感があった。日本にいた時は何度もやっていたことなんだけど、UKでは一度もやっていなかったので、なおさら。今回、二度ぶら下がって少しだけ慣れてきた。

で、ぶら下がって探った結果、ムーブは難しくて、ちびっこには少々辛く、プロテクションのセットは分からず、どうしたものか?グレードはE4 6Bだけど、ワイド・ボーイズのトムさんはE5と言ってるので、やっぱり難しいんじゃないだろうか。


Elder Crack

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=11080

Elder CrackはE2 5b。初登は1950年、Joe Brown。下部がうすかぶりで、上部は傾斜の落ちたコーナークラック。予想外にオフウィズスだった。ガイドブックにはでかいカムが有効と書かれてたので5番6番まで持っていってはいたけれど、登りはハンドくらいのサイズだと思っていた。オフウィズスは、ビレーデバイスを胸の位置にセットするロープソロには不向き。というか、やったことないのでどうなるか分からない。見合わせる他あるまいと思っていたところ、さっきのクライマーがビレーを申し出てくれた。ありがたくお言葉に甘えさせてもらって、登った。二人の登りを見てしまったのでオンサイトではないけど、このグレードのワイドを比較的スムーズに登れたのが嬉しかった。

といったところで、娘を学校からピックアップする時間が近づいてきたので、急いでギアを回収して、早足でで駐車場に向かった。

次は...


久々の日光を岩場で浴びることができて、幸せな時間だった。ただ、この季節の岩場は寒すぎる。気温は5度くらいだろうか?特に朝は岩がまだ冷えていた。さらに風もあってあっという間に体が冷えてしまった。やってられない。Eastern Gritの岩場はほとんどが西向き。朝日で温まる岩場を探すのはなかなか難しい。さてどうしましょう?


2019年11月12日火曜日

ボブ・マーレー・エクステンションを登った

この夏の終わりの記録。

日曜日から1週間のロンドン滞在が始まるということで、金曜日にはボブ・マーレー・エクステンションを登りに行ったが、ミッジーズに襲われて退散してきた。やむを得ない、しばらくクライミングはお預けだ、と思っていた土曜日の朝。予想外に気温は低く、強い風が南から吹いていた。

ボブ・マーレーのあるカウパー・ストーンは、ミッジーズの溜まり場だ。ミッジーズは夏場に現れる極小の吸血の羽虫で、どこからともなく大量に現れて人を襲う。あまりに数が多くて次から次に襲いかかってくるので、叩き落として撃退することはできない。夏の岩場でミッジーズを避ける唯一の方法は、風の強い場所を選ぶこと。

南向きのカウパー・ストーンにとって、南風は絶好の条件だ。しかも、太陽は薄い雲の後ろに隠れていて、気温もほどほど。これは行くしかない。

カウパー・ストーンは、Stanage Edgeというエリアに位置する。Stanage Edgeは3キロだか4キロだか知らないけど端から端が見えないくらい長大な岩壁が続くエリアで、ものすごい数のルートが設定されている。そんな長大なエリアの端の端にある牛の糞みたいな形をした岩が、カウパー・ストーン。

高さ10mくらいのカウパー・ストーンには水平のフレアした巨大なクラックが数本走っていて、その一番下のクラックを左から右にトラバースするのが、Zippatrocityという課題。この課題の後半はジャミングを駆使するクライミングだが、前半はフレアしたクラックが太すぎてジャミングはできず、スローパーをペシペシ叩くリップトラバースになる。Zippyというニックネームをもつクライマーが初登したクラシック課題だ。この動画を見れば、なんとなく雰囲気はわかってもらえるんじゃないかと思う。

 

このZippatrocityを逆流し、ついでにスタートにケービングを付け足す課題が、The Bob Marley Extention。初登は2007年、ワイド・ボーイズのトム・ランドール。

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=468613

スタートのケービングは、これまで数々の岩と岩の隙間に挟まってきた経験がバシッと決まって、簡単だった。前半のクラック・トラバースも即日解決。トムさんは、左→右トラバースのZippatrocityより難しいとコメントしているが、特に問題なし。気づいたのは、水平クラックのハンドジャムは吉田式が圧倒的な威力を発揮すること。虫様筋ジャムとは大違い。

中間部のスローパー・パートもムーブは問題なし。ただ、クラックからトラバースへの繋ぎでかなり苦労した。この動画の4:15のところで、トムさんは右手クロスでフィンガーを刺しているけど、これが僕の短い腕ではとても厳しい。トムさんのクロス一手で済むところを、5手を繋いで行ったり来たりを繰り返すことで解決した。ここのムーブを発見できたことで、課題の解決に向けて大きく前進することができた。



残るは最終局面。中間部後半のカンテを回り込んで、凹角に入って、そこからフィニッシュまで。ここもまた、吉田式ハンドジャムが水平クラックで威力を発揮した。あと数手で終わり、両腕がパンパンに腫れてどこまでいけるかという局面で、うまくいけがジャムで完全に脱力したレストができるというムーブを発見した。もっとも、非常に不安定な体勢からクロスでジャミングをキメることを要求されるので、最終的には確実にジャムをキメてレストすることは諦め、一瞬キマったジャムでごまかして先に進むことになったが。さらにその先でも、吉田式ジャムが圧倒的な優位性を示し、核心部である後半部を大いに楽にしてくれた。

この課題とはたくさんの時間をかけて向き合った。クラックからスローパーへの繋ぎのムーブ、後半のパンプの処理で大いに悩んで、ムーブを確実にものにしようと練習を繰り返し、その度にミッジーズに襲撃された敗退を繰り返した。最終的には、強い風と雲の力を借りて、ムーブを洗練させることは諦めて、勢いで押し切った。

この課題のグレードは7C。この数字を額面通りに受け止めれば、7B+を登ることなくグレードを更新したことになる。しかし、吉田ジャムを知ってしまえば、そこまでの難易度にはならないだろう。何を基準にグレードをつけるかという話になってくるので、数字には意味はなかろう。多分ワイドボーイズの二人くらいしか登ってないからグレードは未確定だろうし、これからも登る人はいないだろう。でも、こういう課題と向き合って自分のクライミングができることは、とても嬉しいことだ。

2019年10月22日火曜日

懸垂・ビレイ用安全環付きカラビナを考える2019

懸垂・ビレイ用安全環付きカラビナを考えたのは、2017年のことだった。

その時に有力だったグリベル・クレプサイドラK10Gツインゲートカラビナを購入してずっと使っていて、とても満足していた。しかし、ツインゲートカラビナを使用したトップロープ・クライミングにおいてカラビナがビレイループから脱落するという事故が発生して、ツインゲートの信頼性に疑問が生じた。クレプシードラに死角はないと書いたんだけど、死角はあった。ごめんなさい。

ということで、改めて考えてみようという企画。

選択の条件は前回と同じ。

必須の条件として、

1. スクリューを閉める必要がなく、自動で閉まってくれること
2. 作業中にゲートが不意に開く恐れがないこと
3. マイナー・アクシスが発生しないこと

追加的に欲しいものとして、

4. ビレイ・デバイスをセットする作業が面倒でないこと

では始めましょう。

BD グリッドロック・マグネトロン





条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◯
条件3(マイナーアクシス防止)  ◎
条件4(作業が楽)        △

条件1、3は完璧。2がちょっと心配。ツイッターで頂いたコメントでは、経験なしとのこと。ロクスノのギアオタクでは問題なしと書かれてたような気がする。4はちょっと面倒。ビレイ・デバイスをセットするときにセパレーターからビレイ・ループが外れることがあって、再度セットするためにゲートをもう一度開かないといけないことがある。ゲートを開くのはとても簡単そうだけど。

エーデルリッド HMSストライクセーフロック

条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◯
条件3(マイナーアクシス防止)  △
条件4(作業が楽)        △

条件1は完璧。2は、セパレーターがゲートに付いて二重ロックになっているので、不安はなさそう。ただし、セパレーターを上に跳ね上げる方式なので、ビナがビレイ・ループに向かって押されると、ビレイ・ループがセパレーターを押し上げて外れる可能性あり。その時にロックが解除されてゲートが不意に開く可能性が、ないわけではない。3も同じ理由で、ビレイ・ループがセパレーターを押し上げて開いてしまえば、マイナー・アクシスの可能性はあり。4は、セパレーターを押し上げるのが少々面倒で、ビレイ・デバイスのセット時の作業が一つ増えてしまう。

エーデルリッド HMSブレットプルーフトリプルFG



条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◎
条件3(マイナーアクシス防止)  △
条件4(作業が楽)        △

条件1、2は完璧。4は、セパレーターを押し上げるタイプなので、ビレイ・デバイスのセット時の作業が一つ増えてしまう。3も、セパレーターが押されてビレイループがセパレーターから外れる可能性あり。

SALEWA(サレワ)ビレイツイストロックカラビナ


条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◎
条件3(マイナーアクシス防止)  △
条件4(作業が楽)        △

基本的に上と同じ。

グリベル クレプサイドラK10Gツインゲートカラビナ

http://www.edgeandsofa.jp/fs/edgeandsofa/cat374/gd00366




条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◯
条件3(マイナーアクシス防止)  ◎
条件4(作業が楽)        ◎

条件1、3、4は完璧。前回不安があった4も、使ってみたら全く問題なく快適だった。ただ、肝心の条件2が不安あり。例の事故は、二枚のゲートの間に何か(例えばビレイループの出っ張りとか)が挟まるとゲートが開くのが原因じゃないかと推測されている。事故のあったタイプ(ノーマルゲートとワイヤーゲートの組み合わせ)と違って、これは隙間がごくわずかなので、不意に開く可能性は小さい。とはいえ不安はあり。

グリベル クレプサイドラS ツインゲートカラビナ



条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) △
条件3(マイナーアクシス防止)  ◎
条件4(作業が楽)        ◎

K10Gのスモール・バージョン。基本的には同じ構造だけど、ゲートがノーマルとワイヤーの組み合わせなので隙間が大きくて、何かが挟まって不意に開く可能性がより大きい。

マムート バイオニック・クロスロック



条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◎
条件3(マイナーアクシス防止)  △
条件4(作業が楽)        ◎

(多分)インターナショナル・ウェブサイトにはないのに日本のウェブサイトにはあって売り切れになってるという謎の商品。条件1、2、4は完璧。死角はないかと思いきや、以下の動画を見るとわかる通り、セパレーターが上下双方に開く仕組みになっているので、不意に開いてビレーループが外れる可能性あり。余計な機能をつけたものだ。惜しい。



DMM Ceros Locksafe

https://dmmclimbing.com/Products/Locking-Carabiners/Ceros



条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◎
条件3(マイナーアクシス防止)  ◎
条件4(作業が楽)        ◎

2017年には(多分)なかった新顔。DMM Cerosには三種類あって、通常の手動スクリューゲートのScrewgate、ダブルアクションのKwicklock、トリプルアクションのLocksafe。一番安心なのがLocksafe。自動でゲートが閉まるので、条件1は完璧。トリプルアクションで条件2も完璧。セパレーター押し下げ方式で、条件3も完璧。自動で閉まるゲートと押し下げ式セパレーターが合間って、条件4も完璧。ということで、セロス・ロックセーフに死角はない!


2019年9月23日月曜日

Pecomaさんがやってきた

スコットランド旅行帰りのPecomaさんがシェフィールドに立ち寄ってくれたので、一緒にクライミング。

初日


Stanage Popular




断水により学校が休みになった娘(9)を連れて、Stanage Popular。ここは、The most popular section of the most popular crag in UK。外せないエリアです。登ったのは、Flying Buttress HVD 4a、Leaning Buttress Direct HVS 5b、Flying Buttress Direct E1 5b。僕は全部フォロー。この中ではFlying Buttress Directがやはり素晴らしい。どっかぶりで、ホールドは全部ガバで、ヒールフックとか使って、豪快に登る。そんなトラッド。日本にはこんなルートは一本もないと思う。

Raven Tor




お昼ご飯を食べて、娘(9)を町まで戻したのち、雷雨の予報を受けて、雨でも登れる石灰岩ボルダーを選択した。行き先は、石灰岩スポーツルートの総本山であり、石灰岩ボルダーの総本山でもあるRaven Tor。ここではまずChimes Start 6Bを登った。それからPecomaさんがWeed Killer Traverse 7Bを登ったところで、夕日のさすエリアは暑いので別のところに移動することにした。

Lees Bottom




Lees Bottomは比較的新しくてマイナーな石灰岩ボルダー。北向きの岩場はそれなりに涼しい。It Buzz Me 6Bというブラキオポッドの化石をホールドにする超面白い課題を登った。それから、前回きたときに敗退していたGoose Grease 7Bを完登。これは超嬉しい。



晩御飯をパブで食べて解散。

二日目


Millstone Edge




お昼に用事があったので、朝PecomaさんをクラッシュパッドとともにStanage Plantationでドロップ・オフ。子供を学校からピック・アップしたのちに、再度集合してクライミング。石切り場のクライミングをやってみようということで、Millstone Edgeで登ることにした。

晩御飯をOutsideのカフェで食べてから登ろうと思ったけど、食事は終わっていたので、プランBでCalverのSparで買い物をして岩場で食べた。ここのSparは地域の名産品に力を入れているちょっと特別なSparなので、ピークディストリクトを訪れる人にはオススメ。フォカッチャが美味しいのと、サラダバーが栄養補給に最適。



トラッドやろうということで、まずはPecomaさんがThe Mall VS 4cをリード、僕がフォロー。快適なクラックで超いいルート。上部でちょっとしたハングをフィンガージャムをキメて越えるところがあって、ピリッと刺激もあって楽しい。そのあと、Great Portland Road HVS 5bを僕がリード、Pecomaさんフォロー。出だしがひどい。超難しい。しかもプロテクションから脇にそれるからグラウンドの可能性あり。そこを越えたら楽しいコーナーのステミングが続く。最後は僕は左の簡単な方に逃げたけど、Pecomaさんはコーナーを直上で押し通した。さすがである。プロテクションのセットに戸惑ったのが反省点。岩の上でのビレーの構築も手間取った。



あまり時間もないということで、最後はボルダリング。Technical Master 6BをPecomaさんが登って、Green Death Superdirect 7Bに僕は敗退した。

三日目


丸一日予定が空いていた三日目、天気が悪そうってことで、ボルダリング。

Cowperstone




まずはCowperstoneで、僕はThe Bob Marley Extension 7Cを、PecomaさんはZippatrocity 7B+をやった。僕はジャムパートからスローパーパートに移る最後にして唯一のフィンガージャムをキメることができず、敗退。Pecomaさんもスローパーパートが繋がらず敗退。風が止んでミッジーズがやってきたので終了。

Burbage South


お昼をOutsideのカフェで食べながら村のパレードを見学し、午後はBurbage Southでボルダリング。まずはHanging Prow。立ちで6Cでシットで7A+だけど、シットにしても何の強度も加わらない謎設定。ミッジーズも出てきて、敗退。

次はPebble Mill Stem 7A。絶妙なグルーブをトラバース。ムーブがわからなかったけど、打ち込めば面白い気がする。ミッジーズがうるさかったので、移動。

最後にPecomaさんがミッジーズが飛び交う中で7 Ball 6Cを登った。

西からの風がBurbage Valleyを吹き抜けて快適に過ごせると予想してBurbag Southを選んだんだけど、失敗だった。実際には無風でミッジーズがひどかったので、ここでフィニッシュ。

四日目


Stanage Plantation


午前中に家族の用事をすまで、午後集合。お気楽トラッドやろうってことで、Stanage Plantationに向かった。



The Right Unconquerable HVS 5a、The Left Unconquerable E1 5c、Millsom's Minion E1 5b、Goliath's Groove HVS 5aの四本をPecomaさんがリード、僕がフォロー。The Right Unconquerableは1949年ジョー・ブラウン初登のクラシック。リードだったらマントルが怖くてなお面白そう。The Left Unconquerableは不確実な振られるムーブが出てきて、ちょっと難しい。Millsom's Minionはプロテクションが限られ、かつムーブが読めない、次のホールドが見えないスラブで、ピリッとした緊張感を味わってもらえたんじゃないかと思う。Goliath's Grooveは言わずとしれた超爽快なコーナークラック。ちなみにこれ、四本ともイースタン・グリットのTop50である。星の荒稼ぎ。全部超いいルート。

Higgar Tor


Goliath's Grooveでミッジーズが増えてきたので、場所を変えて風を求めてHiggar Tor。The File VS 4cを僕がリード、Pecomaさんフォロー。バチ効きのハンドジャムが終始続く爽快なルート。だが、例によってビビりまくってプロテクションのセットに手間取った。そして、予想に反してミッジーズはとても多かった。

もはやミッジーズを避けるすべはなかろうということで、最後にパブでご飯を食べながら歓談をして、フィニッシュ。

何とも楽しい数日間であった。

2019年8月10日土曜日

2019年5月から7月のボルダリング

5月上旬 Burbage South


友達とその友達とボルダリング。Your Basic Mantle 6C、7 Ball 6Cを登った。

5月上旬 Rivelin


朝1時間弱、Boffwidth。ワイド登りで7A。フィストがスカスカで超厳しい。また今度。

5月中旬 Shipley Glen


Red Baron 7A+、 Smear 6A、Vim 6 A+を登った。Manson's Wall 6Cに敗退した。

5月中旬 Rivelin 


2度目のBoffwidth。またもや敗退。隣のMini Beakをやったら、あっという間に指皮がなくなった。

5月中旬 RA


Worse Habits sit start 6A+、Habitus sit start 6Bを登った。Faith Left Hand 7A+が登れなかった。

5月下旬 Curbar


友達と一緒にWalk on By 7C。右のほうのサイドプルを保持するところまで行った。

5月下旬 Curbar


Walk on By 7C。左手を持ち替えて、左足を上げるところまで。

5月下旬 Anston Stone Wood


https://www.ukclimbing.com/logbook/crag.php?id=953

二家族合同ピクニック&ボルダリング。Grape Crusher 6C、Trench Warfare 6B、Unnamed 7A、Blue Circle 7A、Last Stand 7A、Blind Bat 7A+を登った。

5月下旬 Burbage North


Definitive 5.12 6Cを登った。

5月下旬 Ramshaw


Melvyn Braggは乾きが悪い。Force Nineはいいスラブ。Night of Lust Startは膝に悪い。

5月下旬 Burbage South Edge


Definitive 5.11 6C+、疲れて登れなかった。

6月上旬 Anston Stone Wood


ピクニック&ボルダリングで適当に。Dark Art 8Aは離陸が厳しく、いまいち。

6月上旬 Burbage South Edge


Definitive 5.11 6C+を登った。

6月上旬 Yarncliffe


THEM!を少しだけやった。蟻がいなくなる冬を待つ?

6月上旬 Raven Tor


Powerbandの最後のムーブの検討。今一歩。

6月中旬 Burbage South 


The Kursk 6C。雨の合間でクラックの下部はびしょ濡れだったけど、何とかなった。

6月下旬 Higgar Tor & Sheepfold


娘に付き合ってもらって夕刻のボルダリング。

Higgar Torで隙間P。フットホールドがちょうど良い感覚で見つかって、残念ながら思ったより簡単だった。6Bくらい?

時間があったのでSheepfoldまで足を伸ばして、Your Horse is Dead 7A。短いけどシンハンドでの大きなムーブが厳しい水平ルーフ。結構苦労して完登。

6月下旬 Stanage


Cowper StoneでThe Bob Marley Extension 7Cのムーブ探りを小一時間。後半のムーブはできたけど、完全な持久系で、最後の方に不安定なムーブが一つあるので厳しいかもしれない。

6月下旬 Stanage


天気が良かったので、夕刻、Cowper Stoneで家族とピクニック。The Bob Marley Extension 7Cのムーブ探り。ムーブは全部できたけど、果たして繋がるのかどうか。

7月上旬 Stanage, Raven Tor & Lees Bottom


ゲスト二人を迎えて、Stanage。二度目のGreen Traverseと二度目のNot to Be Taken Awayを登った。二日目は、Millstone EdgeでTechnical Masterを登って、そのあとはRaven TorとLees Bottom。Goose Grease 7B、敗退。

7月上旬 Stanage & Squirrel Buttress


CowperstoneでThe Bob Marley Extension 7C。後半が繋がった。そのあとは、Squirrel Buttress。

7月中旬 Raven Tor, Lees Bottom, Millstone Edge, Cowperstone & Burbage South

ゲストを迎えて、クライミングした。


Climbing at Slate Quarries:スレートの石切り場のクライミング

ニールさんに誘ってもらって、North Wales(北ウェールズ)のスレートの石切り場でのクライミングを再び体験する機会を得た。スレートの石切り場は、クライミングが面白いのはもちろんのこと、クライミング抜きでも超楽しい。グレート・ブリテン島で一番いいところなんじゃないかと思う。それにもかかわらず日本語の情報はほとんどないので、ここにメモを残しておく。


アクセス


スレートの石切り場があるのはウェールズの北部。おそらく、マンチェスターの空港からアクセスするのが便利。車で2時間くらいだと思う。あるいはリバプールでもいいのかもしれない。ヒースローからは車で5時間くらいなので、乗り継ぎの煩わしさとリスクを考えると、運転が苦でない人はヒースローから車でアクセスしてもいいだろう。

観光情報


城巡り


まずはウェールズの歴史を感じる城巡りに出かけよう。北ウェールズにはイングランド対ウェールズの戦いの舞台となった中世の城がある。今の感覚でいうとロンドンに近い南ウェールズが戦いの舞台になりそうなものだが、イングランドの軍勢はチェスターから北ウェールズに攻め込んだらしい。その歴史を知ると、UKの皇太子がPrince of Walesと呼ばれる理由もわかって来る。

特に重要な城の4つがConwy、Caernarfon、Beaumarisともう一つどこからしい。Conwyは地形と城壁が守りを固めているのが理解できてとてもいい。Caernafonも堅固さを感じられてすごくいい。Beaumarisはまあまあ。

ウェールズの城だとかアビーだとかを巡ることができるパスがあって、超オススメ。
https://cadw.gov.wales/visit/places-to-visit/admissions

ビーチ


天気が良ければ、ぜひビーチを訪れたい。北ウェールズのビーチは広くて美しい。Llandudnoは典型的なUKのビーチリゾートらしく、80年代に貧乏なクライマーが万引きして警察に追いかけられた街を散策するという楽しみもあるようだ。落ち着いたビーチがお好みの方は、Anglesey Islandがオススメ。僕はグーグルマップで見つけたTraeth Lligwyというビーチに行った。引き潮の時は海がはるか先まで遠ざかって広大な砂浜が現れる。超いいところだった。なお、UKの海は全般的に言って生き物は少ないのが残念。

スレートの岩場はSnowdoniaという山岳地帯の端にあって、天候は少々不安定だ。岩場は雨だが北の空を見ると青空が見えるということはよくあるみたい。海がキラキラ光って、その先にはAnglesey Islandが見える。そんな時なクライミングを切り上げてビーチに向かうのもいいだろう。

Welsh Food Center

https://www.bodnant-welshfood.co.uk

ウェールズもイングランド同様飯はうまい。ウェールズの食品を扱う小さなフードセンターに行くと、ウェールズの食に触れることができる。チーズは特に品揃えがいい。あと、肉製品も良さそう。美味しいパンも手に入る。僕が行った時にはその他はイマイチな感じだったけど、その後オーナーが変わったようで、もっといいところになっているかもしれない。

National Slate Museum

https://museum.wales/slate/

いよいよスレートに近づいてきた。スレートの岩場はLlanberis(ランベリス)という街のすぐ脇にある。その街のはずれにあるのが、National Slate Museum。スレートの石切り場の歴史に触れることのできる素晴らしい博物館だ。北ウェールズを訪れるのであればここは絶対に外せない。スレートの岩場に向かう前にぜひ訪れておきたい。スレートの岩場で目にする様々なものをよく理解できるはずだ。

Snowdon Mountain


スレートの岩場のあるSnowdoniaという山岳地帯の誇る山が、Snowdon。ウェールズの人は、ここがUKで最も美しい山であるという誇りを持っている。UKで一番高い山はスコットランドにあるが、一番美しい山はウェールズにあると。ぜひ登っておきたい。山といっても日本の基準からしたら大したことはなく、ハイキング程度。ハイキングルートはいくつかあるようだ。クライマーはみんな歩くのは嫌いだろうから、そういう人はLlanberisの街から汽車に乗ってしまおう。Snowdon Railwayが山頂まで運んでくれる。

https://snowdonrailway.co.uk


スレートの岩場


北ウェールズの海と山と食を満喫したところで、いよいよスレートの岩場に向かおう。岩場はLlanberisの街のすぐ脇だが、アプローチは反対側から。車で近寄った時点で度肝を抜かれること間違いなし。Bus Stopに車を置いて、水平のアプローチだ。


まずは歩きながら耳をよくすませてみよう。地面に散らばったスレートの破片を踏んで歩くと、カランカラン、チャリンチャリンと楽しい音が響く。それから、足元のスレートの破片を見ると、時々エメラルドグリーンの模様が入ったスレートを見つけることができる。美しいスレートの破片を探すのも、楽しみの一つ。

クライミングエリアもすぐそこだが、登るのはまだはやい。まずは壮大な景色を堪能し、それから残された石切り場の施設にも目をやろう。いくつかの小屋には石切り場が閉鎖された当時の道具が未だに残っている。石切り場全体が博物館のようなものだ。石切り場の労働者をモデルにしたアートが各所にあるので、探してみよう。


可愛らしい植物を眺めるのも良い。


クライミング


ガイドブック


スレートの岩場は構造が複雑で、幾層にも別れた岩場が階段やトンネルで繋がっている。地図がなければあっという間に迷子になれるが、クライミングのガイドブックがあれば大丈夫。


2018年にはRock Fax社から新しいガイドブックが出た。例によって、とてもわかりやすいけれど、インタビューとか歴史とかの記述はない味気ないガイドブック。

情緒たっぷりのガイドブックがGround Upから2011年に出ているけれど、今は入手できないようだ。
https://www.ukclimbing.com/logbook/books/llanberis_slate-1370

ルート


スレートの岩場には、トラッド・ルートとスポーツ・ルートが共存している。それも、エリアごとに別れているというわけでもなく、トラッド・ルートのすぐ隣にスポーツ・ルートがあったりする。さらに、Eグレードが付いているにも関わらず、部分的にボルトが打たれているルートもあってそのエシックスを理解することは難しい。ここでは難しいことを考えるよりも、クライミングとして面白いものを登るのが正解だろう。

スレートの特徴は、フリクションのないツルツルの岩質。その岩質を堪能できるスラブはぜひ登っておきたい。それから、スパッと切れたカンテも面白い。カンテはスポーツルートが中心になるだろう。あと、コーナー。フリクションがないのでレイバックに逃げるのが厳しくて、面白いクライミングになる。最後に、ぜひ注目してもらいたいのが、人工物の存在。この地でクライミングが始まる前の石切り場の時代の人工物がルート上にも残されていて、それをホールドにしたり、プロテクションにしたりする。スレートの岩場ならではのクライミングなので、そういうルートはぜひ登っておきたい。

では、おすすめルートのご紹介。



岩場に横たわる錆びた送水管からスタートするスラブ。かつてはもう一本の送水管の上をトラバースしてから直上だったらしいけど、その送水管は下に落ちてしまったので、今は普通のトラバース。トラバースした先に巨大な錆びたチェーンがぶら下がっていて、そこにスリングを回してプロテクションにする。スレートの岩場らしいルート。

Pull My Daisy E2 5c

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=6611


スラブのトラッドルート。中間部まではシンクラックにスモールナッツだのスモールカムだのをねじ込んで登る。ルートの3分の2くらいのところに鉄の棒が刺さっていてそこにスリングを巻いてプロテクションにしたら、あとはひたすらランナウト。これもスレートの岩場らしいルート。レインボーという超有名な岩にあるのも良い。

Dinorwig Unconquerable E3 5c

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=8163


ガイドブックに'Indian Creek comes to the slate quarries'と書かれているルート。シンハンドのコーナークラックで、クラックの外にはホールドが全然ないので、ひたすら手とつま先をクラックにねじ込み続ける。

German Schoolgirl E2 5c

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=8262


閉じたコーナー。コーナーの脇にシンクラックが走っていて、そこにスモールナッツをねじ込んで登る。ガイドブックには'well protected by wires'と書かれている。極小ナッツを信じるか否かはあなた次第。

とうことで、超楽しいスレートの石切り場のクライミングを紹介した。本当に超楽しいので、ぜひ登りに行ってもらいたい。





ここから先は個人的メモ。今回登ったルート。

German Schoolgirl E2 5c オンサイト
Dinorwig Unconquerable E3 5c 初めてのE3、オンサイト
G'Day Arete 6c たぶんUKで初めてのスポーツ・ルート、オンサイト


2019年7月10日水曜日

カムを3本なくしかけた:プロテクションの回収とスタック防止について考える

この前のスレートの岩場のクラックでプロテクションの回収とスタック防止について考える機会を得た。というのも、1本のルートでカムを3本もスタックさせて失うという大事故を起こしかけたから。

この機会に、回収方法とスタック防止方法について考えておきたい。ちなみに、ここに書くことは、トラッド・クライミングを誰かにちゃんと教えてもらってやってる人にとってはごく当たり前のことかもしれない。僕は完全に独学でやってるので、当たり前の知識が備わっていない。主として自分のためのメモとして残したい。

3本のカムがスタックした状況、事後対応、事前予防策を順番に整理しよう。

ケース1:タイトセット


  • 状況

黄色のC4。タイトセットしたカムがスタックして、トリガーを引いても出てこないケース。これはトラッドをやってる人の多くが経験したことのある話しだと思う。

  • 事後対応

(1)スリングに輪を二つ作る(なんでもいいけど、ラビット・ノットあたりがいいかも)、(2)輪をトリガーに一つづつかける、(3)輪の反対側をハーネスのビレイループに連結する、(4)スリングにぶら下がってトリガーに全体重をかける。これが僕の定番の対応で、多分トラッド・クライマーはみんなやってる。

今回もこれで回収成功。

  • 事前予防策

タイトセットでスタックの予防策は、タイトセットしないこと。いうまでもない。しかし、カムの番手の中間サイズのクラックで、タイトセットするか、ゆる目にセットするかは悩みどころ。僕はかつて、「スモールカムについては常にタイトセットなんだけど、ハンド以上になるとユルユル」という指摘をいただいたことがあって、大きめのカムのセットは気をつけるようにしていて、それで今回のような事態になったというわけ。個人的な感覚としては、ユルユルでカムが抜ける心配をするより、タイトにセットして安心した方がいい。タイトセットでスタックしたカムは多分上記の方法で大抵回収できるから、問題なし。スタックを恐れずブチ込むのが正解。


ケース2:ルーフの抜け口


  • 状況

緑(か黒?)のマスターカム。ルーフの抜け口にセットしたカムがウォーキングで奥に入っちゃったケース。今回は随分奥に入って、カラビナまでクラックの中に吸い込まれ、しかもクラックはシンハンド・サイズで、ロープのアンクリップさえ危ぶまれたくらい。

真ん中のカムが奥に入っちゃった

  • 事後対応

奥に入ったカムは、緩めのセットだった。奥に入りすぎて、クラックに手が入らず、一本目と同じスリング・メソッドは使えなかった。そこで、スリングの先にカラビナを一枚つけて重りにして、それをクラックの中のカムのさらに奥を目がけて投げ入れた。そしたら、狙い通りにスリングがカムローブに引っかかって、カムはポロっとルーフの下に抜けてきた。

  • 事前予防策

リード&フォローの時はこのケースが起こるとフォローが登れなくなるので、事前予防がとても大事。

ルーフの抜け口のカムが奥に入るのは、その部分でロープが屈曲していて、ロープが上に引かれるたびにウォーキングするから。



予防策(1)としては、この屈曲の角度をなるべく少なくするために、ルーフ下のプロテクションを延長するとか、セットの位置を下げるとか。そうするとそこまで奥には入らないような気がする。


予防策(2)としては、ロープの動きを少なくすること。ロープの動きが激しいと、屈曲部のカムが大きく振られてウォーキングしてしまうので、ルーフを超えたらクリップ時のロープの引き込みはソフトに。少しは予防になりそうな気がする。しかし、落っこちそうになりながらクリップするときにそんな配慮ができるかは知らない。あと、リードの最中にはウォーキングしなくても、フォローが登ってる最中にウォーキングする可能性もあるから、フォローのビレーも張りすぎないようにした方がいいかもしれない。しかし、フォローが怖い思いをしそうだから、判断が難しい。

ケース3:1本目のカム


  • 状況

青のマスターカム。1本目のカムがウォーキングで奥に入っちゃったケース。トリガーがクラックの中に入っちゃって、フィンガーサイズだからトリガーを引けず、回収不能。これも多分、トラッドをやってる人は一度は経験したことのある良くあるやつ。



  • 事後対応

色々やろうとしたけど、結局回収できなかった。初めてのカム・ロスト。ナッツキーがあればなんとかなったかもしれないけど、離れた場所に置いてきちゃってたので使えず、断念。無念。

  • 事前予防策

ウォーキングの原因はロープが屈曲することなので、予防策(1)はもちろん、ビレイヤーが1本目のカムと2本目のカムを結ぶ直線上に立つこと。しかし、諸々の事情でそれができないことはよくある。レッジに上がってスタートとか、落石の恐れがあって離れてたいとか。

予防策(2)は、ケース2のルーフの抜け口と同じで、クリップするときにロープをソフトに引き込むこと。それができるかどうかは知らない。

予防策(3)は、カムのウォーキングが起こりやすい1本目のプロテクションにはカムを使わないこと。ここでナッツは最悪で、ロープの屈曲部ではいともたやすく抜ける。ジッパリングっていうのかな?やはり、カム効果のあるプロテクションでないといけない。そこで考えられるのが、トライカム。カム(というかスプリング・ローデッド・カミング・デバイス)と違ってウォーキングはせず、ナッツと違ってパラレルでも効く。

1本目のプロテクションはトライカムでいこう(効果は保証しません)。

考察は以上。ひとまずの仮説であって、正しいかはわかりません。コメント歓迎。

2019年6月19日水曜日

Stanage Popularでやさしいのを四本

普段はボルダラーの友達がイタリアでトラッドのマルチをやるに際してちょっとギアに慣れておきたいってことで、二日間にわたりトラッドに行ってきた。行き先はStanage Popular。The most popular section of the most popular crag in the UKらしい。

初日は、Right Twin Crack VS 4c。初登は1950年代。トラッドが久々の友達が途中で降りてきたので、途中までロープがかかってる状態から、僕が登った。やはりトラッドはメンタル。とうか、慣れか。僕は核心部にカムを二本足すことで心理的障壁を下げて突破した。核心部は真っ向勝負のジャムが求められて超楽しい。

で、登ってる最中から雨が降ってきて、初日はここで終わり。奇跡的な風向きによりルートは濡れずに済んだので一本登れてよかった。

二日目は、Manchester Buttress HS 4bから。初登は何と1930年代。僕はフォロー。左にトラバースして右にトラバースしてと、顕著な岩の膨らみの弱点をぬって露出したムーブを繰り返す超ナイスなルートだった。

次は、Narrow Buttress VS 4c。初登は1949年。これまた顕著な岩の膨らみの弱点を突くライン。スラブに水平のクラックが走ってるんだけど、プロテクションのセットは限定されていて、随分ランナウトする上に、受け付けてもらえるプロテクションがマスターカムの紫とか青とかで、結構緊張する。最後にキャメ青を叩き込んで安心した後に、ハングを超えての露出感満点のマントルが待っているという最高に爽快なクライミングだった。

最後は、Inverted V VS 4b。初登は何と1922年!僕は前にリードしているルートで、今回はフォロー。RockfaxのEastern GritのTop50に選ばれているルートで、やっぱり良い。

ということで、短時間だったけど、久々にトラッドを楽しんだ。

2019年5月19日日曜日

Shipley Glenという岩場

Shipley GlenはYorkshire Gritの岩場。

https://www.ukclimbing.com/logbook/crag.php?id=1343

Yorkshire Gritっていうのは、その名の通りヨークシャーに散在するグリットストーンの岩場を一まとめにした言い方。北のほうにはCypherで有名なSlipstoneが、中央部には景色のいいAlmscliffeがある。南の端は、シェフィールドの境界線あたり。Total Climbingが出版したYorkshire Gritstone Boulderingというガイドブックの収録範囲が大体それ。
https://www.ukclimbing.com/logbook/books/yorkshire_gritstone_bouldering-513

シェフィールド周辺の岩場はヨークシャー・グリットからは除外されていて、シェフィールドはヨークシャーの南西の端に収まってはいるものの、クライミングの観点からするとピークディストリクトっていう一大エリアに近い(一部は重なっている)からだと思う。

ちなみに、ヨークシャーにはグリットストーン以外の岩もあって、西側にはMalham CoveとかKilnseyとかの石灰岩があって、北東に行くとNorth York Moorの砂岩がある。


今回行ったのは、ヨークシャー・グリットの中でも中央部の南寄りに位置するShipley Glen。Total Climbingのガイドブックによると、Almscliffeと並んで人気の岩場らしい。すごく難し課題は多くなくて、ほとんどは7Bくらいまで。日本にはなかなかないスパッと切れたカンテの課題が豊富。

エリアの特徴は、初登された時にヨークシャーでは当時の最難に近い課題だったクラシックがあること。Manson's Wall 6C、Red Baron 7A+、Millstone Grit 7Bあたりがそれ。5あたりの優しい課題にも、明瞭なラインのクラシックが多い。課題の数は250くらい。アプローチは最短の岩で30秒。

岩場は西向きの斜面のてっぺん。岩の前には森が広がっていて、夏には木陰が提供される。冬は夕陽を浴びながらのクライミングを楽しめそう。下地は概ね平らから少々ナナメくらいで、フレンドリー。緊張する高さの課題も結構多い。

岩場の近くには、Cable Tramwayがあるので、子供はおおよろこび間違いなし。世界遺産に登録されているヴィクトリア時代の産業地域であるSaltaireもすぐ近く。
https://www.shipleyglentramway.co.uk
http://www.saltairevillage.info

ということで、誰が訪れても、いつ訪れても楽しめるエリアだと思う。

今回登ったのは、Manson's Wallの岩とそのすぐ隣のRed Baronの岩だけ。

最初にやったのはManson's Wall 6C。初登はAl Mansonで1970年代。垂直とスラブの間の壁に極小ホールドが散りばめられていて結構厳しい。その上、上部はチョークが一切付いていないので、どれがホールドかもわからない。かなり頑張ってムーブに進展は見たけど、一旦パス。

次にやったのは、Red Baron 7A+。初登はMike Hammillで1976年。小さなハングの上にカンテ。出だしがパワフルなムーブで消耗するので、慎重にムーブを考えて、完登。さすがクラシック。超面白い。


それから、Vim 6A+。初登はKen Woodで1960年代。こちらは垂直のスラブ。一見したところ全然難しそうじゃないのに、やってみると難解。Yorkshire Mountaineering ClubのYorkshire Gritstone Vol.2というガイドブックには、「プライドを捨ててローカル・クライマーにムーブを聞け」というコメントが掲載されている。残念ながらこの日はローカルはいなかったが、Total Climbingのガイドブックには、John Dunneが登っている写真がある。この写真からヒントを得て、完登。隣のManson's Wallにボルダラーが来てお話しして、一回やってダメならそっちに合流しようと思った最後のトライで登れた。諦めなくてよかった。


で、もう一度のManson's Wallはやっぱり難しかった。太陽が岩の正面に回って日差しを受けてコンディションも悪化して、結局敗退。

宿題を作ってしまったし、この岩場には楽しそうな課題が山ほどある。また行くことがあるかもしれない。

2019年5月8日水曜日

2019年2月から4月のボルダリング

2月上旬 Stanage Plantation & Burbage West


友達とBrass Monkeyに行ったけど、前日の雪でリップのホールドが凍結していた。Burbage に移動してWest Side Story(14日目)をちょっとだけやって終了。

2月中旬 Burbage West


午後か1時間だけWest Side Story、15日目。寒くて全然ダメだった。午前中の日当たりのいい時間帯が吉。

2月中旬 Burbage West


前回の短いセッションで完登態勢に入った友達と一緒に、West Side Story、16日目。三つ目のサイドプルを保持できない。

2月中旬 Stanage Plantation 


友達とBrass Monkey。前に感じた力強さを全く感じず、だめ。

2月下旬 Raven Tor


Powerband、初日。最後のクライムダウン以外は一応ムーブが理解できた。

2月下旬 Burbage West


West Side Story、17日目。全然ダメ。次回はアップを済ませてから。

2月下旬 Curbar


アップでBuy Buy 6B+を登った。その後、Walk on By 7Cは、極小ホールドで耐える保持力が必要。Sean'S Arete 7Bは、とてもいい。また今度。

2月下旬 Stanage Far Right & Burbage West


West Side Storyでアップ不足を感じていたので、Stanage Far Rightまで歩いてZippattrocity 7B+をやってみた。前半はスローパーのトラバース。後半はフレアしたハンドジャムのトラバース。瑞牆のナーガを横に5つ繋げたような感じ。後半のムーブを理解した頃にはもうヨレヨレで、West Side Storyに疲労を持ち越した。18日目、進展なし。

2月下旬 Raven Tor


Powerband 7C、2日目。ラストのパート以外はムーブがわかった。前半は手数は増えてもちびっこムーブで行った方が楽っぽい。

3月上旬 Curbar


友達に誘われてCurbar。アップでDressed Arete 6A。その後、Walk on Byに行ったけど、風は強いわ、友達は指が痛いわで早々に諦めて、Sean's Arete 7B。まあまあいいところまで行ったので、また今度。

3月上旬 Burbage West


しばらく続きそうな悪天候の前の好天を楽しむために、West Side Story、19日目。スクール・ルームのムーンボードでアップしてから行ってみた。超いい感じ。しかし、三つ目のサイドプルはとまらない。また今度。

3月中旬 Raven Tor


Powerband 7C、3日目。最後のムーブを検討。超難しい。

3月下旬 Burbage West to North


West Side Story、20日目。気温は13度から上昇。日当たり良好で全然持てなかった。Northに移動して、Small is Beautiful。前はできなかった初手のダイナミックなムーブができた。超嬉しい。

3月下旬 Raven Tor


Powerband 7C、4日目。右手のクロスをとった状態から、最後のポケットを取るところまで繋がった。

3月下旬 Burgabe West


West Side Story、21日目。スクール・ルームで、ムーンボードで軽く登って、フィンガーボードして、軽く玉でキャンパして、その後向かった。

3月下旬 Raven Tor

Boot Boys Start 6Cに敗退して、A Little Extra Direct 7Aを登った。

3月下旬 Raven Tor


Powerband 7C、5日目。最後のムーブの検討。

4月上旬 Curbar


Walk on By、2日目。右手のサイドプルに向かって手を出した。

4月上旬 Curbar & Raven Tor


Curbarでは、Geocacheを一つ手に入れた後に、Walk on By 7Cと、右のプロジェクト?子連れだったのでぼちぼちやって、お昼を食べにRaven Torに移動した。Powerband 7C、6日目。スタートから2本指ポッケまで繋がった。あとはピラーに降りるのみ。左足ヒールフック(アナサジじゃないとできない)から、左手をピンチにおろして、それからがばフットホールドに飛び降りる作戦。

4月上旬から中旬 Northumberland


Hepburn

13. Photo Opportunity Arete 5:FL
14. Photo Opportunity Wall 6B:敗退。
17. Rheumatology 7A:敗退。外傾ホールドの保持が厳しい。
23. Arete 6A:FL
24. Shallow Groove 5+:FL
27. Short Crack 3:FL
28. Long Crack 3:FL
29. Hard 6B:FL
57. A Northern Soul 7A+:3日間で完登。
63. Titanic Arete 7A:完登。

Bowden Doors

7. Y-Front 6A+:完登
51. Cave RH Problem 6B+:完登
53. Cave Central RH 6C+:敗退
54. Cave Central LH 7A:敗退
55. Cave LH Problem 6B:完登

Bowden Doors Boulder

8. Scooped Wall 6B:FL

Kyloe in the Woods

31. The Pearler SS 6A+:完登
35. Jock's 6C:敗退
38. Thin Hand Special 5+:FL

4月中旬 Raven Tor


Powerband、7日目。

4月中旬 Robin Hood's Stride


ピクニックで2度目のRobin Hood's Strideに行った。

4月下旬 The P


ピクニック。結構面白くて登れそうな7Aくらいのを二つ登り損なった。あと少しの強さが欲しい。

4月下旬 Stanage Popular


Savage Me Softly 6C+を登った。小さなルーフのオフウィズス。ワイドボーイズ・ファンだけのための課題。

4月下旬 The Forest Rock


https://www.ukclimbing.com/logbook/crag.php?id=1171
スレートのボルダーっていう珍しいクライミング。Saucy Sit 6B+を登った。















2019年4月16日火曜日

Northumberlandのボルダリング

イースターの休暇を利用してNothumberlandに行って、そこで少しだけボルダリングをすることに成功した。Nothumberlandは超いいところなのに、日本語で探すとほとんど情報が出てこない。そこで、Northumberlandのボルダリング事情を少しだけ紹介しておきたい。ちなみに、Northumberlandはカタカナにするとノースアンバーランドかノーサンバーランド。

Northumberlandの場所


Northumberlandは、イングランドの北東部に位置している。すぐ北はスコットランドという国境のエリアだ。つまりローマ人がここまではやってきたということでもあって、歴史的に超面白いエリアだ。


アクセスは、シェフィールドからM1(A1)モーターウェイをただひたすらまっすく3時間半。ロンドンからは6時間くらいだろうか?

観光情報


The Holly Island of Lindisfarne

https://www.lindisfarne.org.uk


Holly Islandは北海に面した小さな島。島なんだけど、アクセスは車で、干潮時に海の底から道路が現れる。この道路を使って車で島に渡るところから興奮が収まらない。水没時に突っ込んで動けなくなる車が時々現れるらしい。


でっかい駐車場に車を置いて、島で唯一の小さな村を歩いて抜けると、Lindisfarne Castleが見えてくる。ここはNational Trustのサイトの一つ。城に向かうアプローチが、風情があってなんとも良い感じ。右手には海とその先にBamburgh Castle、左手には羊。城は、かつては要塞、その後に別荘として使われたもので、中も結構面白い。4月はまだ寒いけど、暖かい時期は城の下の草地でピクニックをするのがいいだろう。

村に戻ったら、Pilgrims Coffeeという珈琲屋が大繁盛しているのに気づくはずだ。ここのコーヒーはうまい。店の中で温まるのも良いし、外のピクニックテーブルでくつろぐのも良い。あるいは、コーヒーをテイクアウェイして次に行くPrioryで楽しむのも良いかもしれない。今回はタイミング的に逃したけど、チャパタのサンドイッチが大人気のようだった。


コーヒーを楽しんだら、徒歩3分でLindisfarne Prioryに向かう。Prioryというのは小さな修道院のことなんだけど、ここは果てしなく古い修道院で、今は廃墟。一部の壁とアーチが残るのみ。遠くにはLindisfarne Castleが見える。暖かい時期は、芝生に寝転んでゆっくり過ごすと最高に気持ちいいはず。ここはEnglish Heritageのサイトで、レセプションの奥に小さな展示が用意されている。この展示はこの島がイングランドの歴史と強く結びついていることを理解するのにとても良い。

Lindisfarne Prioryのすぐ隣には、今も生きている教会がある。ここも超おすすめ。入り口をくぐるとすぐに目に入る彫像は一見の価値あり。

Cragside

https://www.nationaltrust.org.uk/cragside

National Trustサイトの一つ。ヴィクトリア時代の建物がとてもいい。まず、外観がいい。ロード・オブ・ザ・リングに出て来そう。見たことないから知らんけど。建物の中もいい。特にキッチンは素晴らしい。肉をくるくる回転させるメカの動きなんか、とてもいい。家具もいい。ビリヤード台は実際に打てるし。

建物の背後の丘もいい。裏に回ると、小さな湖があって、その脇の砂岩の岩盤にベンチが置かれてて、その佇まいがとても可愛らしい。暖かい時期はなお良いにちがいなない。シャクナゲっぽい植物の密生地を利用して巨大な迷路が作られてて、超楽しい。子供達は大喜び。


Alnwick


読み方がわからなかったんだけど、アルニックって感じでいいらしい。この街の見所はAlnwick CastleとAlnwick Garden。城の方はハリー・ポッターが箒で飛ぶ授業の撮影が行われたところらしく、子供には大人気。ショップもハリー・ポッターグッズがたくさん。商業化されていて、フェイクの装飾で覆われてたり、大人には物足りない。庭園は今回は行かなかったけど、結構いいらしい。

しかし、この街で何よりも見逃せないのが、古本屋。かつての駅を改装した巨大な古本屋が素晴らしい。入り口を入ると暖炉が部屋を温めていて、頭上の本棚の上をミニチュアの汽車が走っていて、カフェもあり、丸一日過ごせる。いや、一日では足りない。

Bamburgh Castle


海辺の城。外観が勇壮でカッコいい。中はまあまあ。宿泊もできるっぽいので、大金持ちの方はどうぞ。


Hadrian's Wall


ローマ人がスコットランドとの国境に築いた長大な城壁。ブリテン島版の万里の長城みたいなもの。Northumberlandの中でも少し南側に位置していて、今回は行きに立ち寄った。イングランドの歴史を感じつつ、よくもまあこんな辺境の地まで来たもんだとローマ人に感心するのにうってつけ。いくつかのEnglish Heritageサイト(https://www.english-heritage.org.uk/visit/places/hadrians-wall/)とNational Trustサイトがあるんだけど、時間がなくて、Birdoswald Roman Fortだけを訪れた。なお、Hadrians Wallの一番の楽しみ方は、Hadrian's Wall Pathという、城壁に沿ってイングランドを横断するロングトレイルにちがいない(https://www.nationaltrail.co.uk/hadrians-wall-path)。時間と健康な膝がある方はぜひ。

宿泊


宿泊はコテージを借りるのが融通がきいて俄然おすすめ。キッチン、洗濯機、その他なんでも揃ってるところが多い。僕が泊まったところは大量のゲームがあって、ガレージには子供用のビリヤード台まであった。お昼はサンドイッチを作って持っていけば、安く済む上に岩場でピクニックできるので、最高。家族の目を盗んでクライミングに行くタイプの方は可能な限り岩場に近いところの方がいいだろう。海辺の街中から、周りに何にもない牧場の一角まで、いろんなロケーションのいろんなところにコテージを見つけることができるので、登りたい課題のある岩場の近くを狙おう。

クライミング情報


Northumberlandの岩は砂岩でフリクションバリバリ、たまにジャリジャリ。スラブのフリクション・クライミングからルーフまでなんでもある。多くの岩場が西向きで、夕日を浴びながらのクライミングが最高に気持ちいい。山ほどエリアはあるけれど、今回訪れたのは北部に位置するHepburn、Bowden Doors、Kyloe in the Woodsの三つ。他にも、Bowden Doorsのすぐ隣のBackbowden、ちょっと南の方のQueens Crag、Shaftoe、Simonside Hillsあたりが人気っぽい。

ガイドブック


Northumberland Bouldering Guide

https://www.ukclimbing.com/logbook/books/northumberland_bouldering_guide-458
Northumberlandのクライミング・クラブが発行したガイドブック。この地でのクライミングの歴史に触れることができるナイスなガイドブック。

クライミング・クラブのウェブサイト

http://northumberlandclimbing.co.uk
膨大な情報が収められている。

Northern England

https://www.ukclimbing.com/logbook/books/northern_england-443
Northumberlandから北部YorkshireまでカバーしたRock Fax社のガイドブック。ボルダリング課題も紹介されているっぽい。中を見てないから知らないけど。Rock Fax社のガイドブックは見易さには定評があるけど、岩場の歴史とか初登情報とかは弱くて味気ない。

Hepburn


https://www.ukclimbing.com/logbook/crag.php?id=9654

ここにはA Northern Soulというこの地のクラシック課題の一つがある。それを目当てに三日間ここで登った。最初の2日は、朝の観光の出発前に家族が朝が朝ごはんを食べている隙に登りに行った。3日目は家族を海岸散歩に向かわせて3時間ほど登った。

エリアは、一部は松林の中で瑞牆っぽい雰囲気、一部は林の外の傾斜地でまあまあ眺望が良い。ナタリーさんのビデオを見ると雰囲気がわかるかも。



目玉の課題はスラブにカンテとクラックという構成のA Northern Soul 7A+と、その隣のスラブのThe Governor 7C。A Northern Soulはこのためだけに3時間運転して訪れる価値あり。


Bowden Doors


https://www.ukclimbing.com/logbook/crag.php?id=824

Holly Islandの帰りに立ち寄って小一時間ほどボルダリングを楽しんだエリア。

ここは10-15mくらいの高さの岩が続くエリアで、ボルダリング課題はその下部に設定されているものがほとんど。トップアウトしないものが多い。左の方のBoulder Areaは小さめのボルダーが多くて、トップアウト。真ん中のエリアの上部は風で浸食された砂岩が波のような造形をなしていて、見るだけで楽しい。西向きで、夕陽に照らされる岩が大層美しい。下地も真っ平らで草地なので、子連れで訪れるにも最適。

Y-Front 6A+は70年代に登られたクラシック。高さもあって、岩の上に立つことができるので、超おすすめ。

かぶった壁で大きなムーブを楽しめるのが、Cave RH Problem 6B+と、Cave LH Problem 6B。Boulder AreaのScooped Wall 6Bも、その名の通りの形状とムーブで超面白い。ただし、雨の後は下地が泥っぽいかも。

難しいのだと、Jerry MofatとかMalcolm SmithとかAndy Earlとかの課題がある。

Kyloe in the Woods


https://www.ukclimbing.com/logbook/crag.php?id=838

最終日の朝に抜け出して40分だけ登った。林の中の静かなエリア。10-15mくらいの岩の下部にボルダリング課題が設定されている。ガバを保持して終了か、トラバース。7Bから上あたりのナイスな課題がいっぱいあるっぽい。



今回は時間がなくて、The Yorkshiere Manの左右のクラックを2本登って終わり。

まとめ


Northumberlandは超良いところだった。その中でもHolly Island/Lindisfarneは格別。イングランドで行ったところの中では一番好き。ウェールズのスレートの岩場と同じくらい気に入った。いつかまた訪れたい。できれば夏に。夏は砂岩のクライミングは難しいかもしれないけど、イングランドの夏は大して暑くないので、日本人は多分大丈夫。日本からもたくさんの人にぜひ訪れてほしい。

2019年2月21日木曜日

乾坤一擲 Goliath’s Groove

イングランドのほぼど真ん中に位置するピークディストリクトは、イングランドで最初のナショナル・パーク。広大なピークディストリクトには無数の岩があって、クライミングのガイドブックの出版で有名なRockfax社は、ピークディストリクトのクライミングのガイドブックを4冊出している。Eastern Grit, Western Grit, Peak Limestone, Peak Boulderingの4冊。最初の三つがルートのガイドブックで、最後はボルダリングのガイドブック。それぞれが厚さ3cmくらいある軽い鈍器だ。

Eastern Gridはその名の通りピークディストリクトの東側の岩のガイドで、有名どころだと、Stanage、Burbage、Curbarあたりが含まれている。南の方のBlack Rockも。このガイドブックの冒頭にはTop500のおすすめルートが紹介されていて、その中にさらにTop50のルートも選定されている。

その一本がStanageのGoliath's Groove。初登は1947年。


ずっと登りたいと思っていたこのルートを、ようやく登ることができた。

下部で落ちたくないロープソロだと、出だしのオフウィズスが核心。行きつ戻りつのノロノロしたクライミングで、会心のオンサイト。

これまで、Eastern GritのTop50を10本ほど登ったけど、その中でも頭一つ抜けて素晴らしい。久々のトラッド・クライミングで、幸福感に包まれた。

さて、次は何を登ろう?

2019年2月19日火曜日

School Room day 13

2H; 2 problems in each grade; open-hand only up to 6B.


まだ余力あり。出し切るための工夫が必要。

2019年2月1日金曜日

2018年10月から1月のクライミング

10月中旬 Stanage Plantation




ちょっとだけボルダリング。Spur Traverse f6C+でアップしてSatinかDeliveranceをやろうと思ってたんだけど、例によってSpur Traverseでどハマり。結局登れず、落胆して帰った。

10月中旬 Burbage West




West Side Story 7Cをやってみた。40分だけのお試し。初手が取れない。ムーブが分からない。初手のホールドがどれかも分からない。



10月下旬 Gardoms


午後からStanageに向かったら、霧雨に包まれた。空が明るい南を目指して車を走らせたら、Gardomsに流れ着いた。Mark's Roofのために何度も来たGardomsで、今回は南の端まで歩いてThe Jackalopeを目指した。

Short Arete 6Bは、左カンテの課題。慣れないカンテにちょっと苦労したけど、フェースのカチに手を伸ばして解決した。Right Arete 6Cはジャリジャリしててパス。Batter Patter 6C+はクラックから左に移りつつマントル。グレードの割に楽に登れた。出だしのピンキーが難しいのかもしれない。あるいは左にそれ過ぎたかも。Brazil Start 6Cは良かった。丸っこいカンテを抱え込む課題。地衣類でジャリジャリのホールドと格闘して、完登。登れるかどうかの境界線上の課題を気合いを入れて登れて、超嬉しかった。と思ったのはマントルを返すまでで、そのあとの下降で死ぬかと思った。過去最高にトリッキーな下降だった。



ちょうど地平線に消える夕日が岩場を照らして、とても綺麗だった。

お目当のThe Jackalope 7Aは敗退。



また今度。

10月下旬 Burbage West


West Side Story 7C、二日目。家族で遊びに来てたお兄さんと、子供を学校に迎えに行く前に登りに来たお兄さんとセッション。初手のムーブが4種類くらいできた。困った。

10月下旬 Burbage West


West Side Story 7C、三日目。アップでWest Arete 6Bをやった。苦手のカンテでムーブがわからず苦労したけど、リップに飛びつくことに成功。ただ、そのあとが汚れてて、飛び降りた。

10月下旬 Stanage Plantation ⇨ Burbage North


午後からDeliveranceをやりにStanage Plantationに向かった。岩の前に着いた途端に雹に振られて退散。Burbage Northに立ち寄った。Small is Beautiful 7A。初手取りのダイナミックなムーブがとてもいい。水平クラックにピンポイントで左手を刺す。届いてるけど当たらなかった。また今度。


11月上旬 Burbage West


午前中の陽当たりを期待してBurbageのBreakfastに向かった。そしたらピークディストリクトは曇天で、強風だった。30分ほどで退散。左のニー・スカムを足がかかりにムーブを組み立てられそうな予感はえた。


11月中旬 Burbage West


朝外を見たら晴れていたので、Burbage West。南風と朝日に期待してWest Side Story、4日目。風はあったけど、霧が谷を駆け上がっていてお日様はなかなか出てこない。しばらく待ってようやく出てきた朝日のを浴びながらのボルダリングが最高に気持ちいい。

小さめのスクワマより穴が空いたブカブカのアナサジ・ピンクの方が感触がいいという意外な発見。また今度。

11月中旬 Stanage Plantation


午後から晴れたので、ピークディストリクトへ向かった。心配していた通り、運転席から見えるWest Side Storyはすでに影に入っていて寒そうだからパス。Stanage Plantationに向かった。Deliverance、5日目。トラバースはもう完璧。あとはリップに向かって飛ぶだけ。右足をどれだけ伸ばせるかが鍵か?

11月中旬 Burbage West


朝から晴れていたので、West Side Story、5日目。朝日を浴びながらのボルダリングが気持ちいい。以前一度だけたまたまできたムーブを確実に再現できるようになって、さらに一歩足をあげられた。いい気分。


11月中旬 Stanage Plantation


午後から晴れてきたので、娘(7)を連れて、Deliverance、6日目。飛び出す時の右手のホールディングが難しい。左のペッブルに下から手を伸ばすと、右手のホールディングが色々できる。また今度。


12月上旬 Raven Tor


午前中少しだけ時間があったので、雨だけどRaven Torに行ってきた。目的は、Powerbandの見学。ジェリー・モファット自伝を読んで興味を持った課題。前半は染み出して全然ダメ、後半は練習できそう。左のメインのケイブをちょっと登ってすぐに帰宅。


12月上旬 Burbage West


久々に晴れたので、朝日を浴びにBurbage WestでWest Side Story、6日目。二手目の左カチから右手の二つ目の縦ホールドをとって、左足&右足を動かすところまで。進歩があった。そして、超気持ちよかった。




12月中旬 Burbage West


朝日を求めてWest Side Story、7日目。太陽は雲の後ろに隠れたり、顔を見せたりを繰り返した。それでも朝日を浴びながら岩の前で過ごすのは超気持ちよかった。最後のサイドプルを取りに行く態勢を整えるコツが少し分かって、ちょっとだけ前進した。超嬉しい。

12月中旬 Stanage Plantation


お誘いを受けてStanage PlantationでBrass Monkey。ルーフのダブルカンテっていう超面白いジャンル。両腕を広げた横リーチいっぱいでカンテの奥のシワに指先がかからないっていうなかなかできない体験だった。強風で極寒。

12月中旬 Burbage West & Stanage Plantation


日のあたるうちにBurgabe WestでWest Side Story、8日目。三つ目のサイドプルを0.1秒保持することに成功した。それから、再びBrass Monkeyで友達に合流。彼は惜しくも登れず、持ち越しになった。僕は箸にも棒にもかからない。

12月下旬 Stanage Plantation


午後少し時間があったので、Goliath's Grooveに向かった。岩場は全体的に湿っぽく、北向きのグルーブに設定されたこのルートはびしょびしょだった。クライムダウンで撤退。

1月上旬 Burbage West & Burbage North


少しだけWest Side Storyに行ったんだけど(9日目)、前日のムーンボード・セッションのせいで指先が痛くて、すぐ諦めた。対岸のBurbage Northに移って、クラックをいくつか登って終了。Wednesday Climb HVS 5b、オンサイト。The Grogan HVS 5c、オンサイト。

1月中旬 Burbage West


最近はムーンボードにハマってて、岩場でのボルダリングは低調なんだけど、あまりにも天気が良くて気持ち良さそうだったので、たまらずWest Side Story、ついに10日目。動画を撮って確認したら、思ったのと違う落ち方。修正できるかもしれない。

1月中旬 Burbage West & Stanage Plantation


West Side Story、11日目。珍しく先客がいた。ちょっとだけやってStanageに移動したので、進展はなし。

1月下旬 Burbage West & Stanage Plantation



West Side Story、12日目。リップは雪でも、岩はパリパリ。それからStanageでBrass Monkey。

1月下旬 Burbage West & Stanage Plantation


West Side Story、13日目。快晴、気温0度、微風。最高のコンディション。三つ目のサイドプルは、左足は無視して右足に立ち込んで飛びつくのみ。StanageではBrass Monkey。友達がやってるのでスポットついでに付き合ってたんだけど、前回は最後のガバどりができて、今回はフリッジ・ハギングのスウィングに耐えることができた。可能性なしと思ってたけど、もしかしたらあるのかもしれない。