2019年11月19日火曜日

Elder Crack & Profit of Doom @Curbar

ずーーーーーっと天気が悪かったんだけど、久々に快晴が期待された一日、トラッド・クライミングをやりに行った。

向かった先はCurbar。狙いは、Elder Crackのオンサイトと、Profit of Doomのムーブ探り。

ちなみに、Curbarは、StanageとかBurbageと同じく、ピークディストリクトの東側に位置するEaster Gritと総称される岩場の一部だ。有名どころは、北から順番に、Stanage、Burbage、ちょっと脇にMillstone Edge。少し離れて、Froggatt、Curbar、Baslow、ちょっと東にずれてGardom's、Birchen、その南にChatsworth Edge。

Profit of Doom

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=11077

娘を学校にドロップした後に岩場に向かった。Elder Crackの取り付きにはクライマーが二人いて、ご挨拶。二人ともElder Crackを登るようで、セラバンドで入念なウォーミングアップをしていた。時間がかかりそうだったので、先にProfit of Doomのムーブ探りをすることにした。

Froggatt、Curbar、Baslowは、Derwent Riverが削り取ってできた大きな谷の最上部に残された幕岩だ。その上はほぼフラットなMoorが広がっていて、数キロメーター続く岩場の上部には木は一本も生えていない。もちろん終了点のボルトはない。したがって、このエリアでのクライミングはトップ・アウトした後にナチュラルプロテクションでアンカーを構築してフォローを迎えて初めて完結する。ラペルでムーブを確認する際には、逆に最初に岩の上部でアンカーを構築するところから始めてロープをフィックスしないといけない。そして僕はそれが苦手だ。

まずは最上部にカムをセットして、そこから短いロープを使ってアンカーを伸ばし、少し下がったところにさらにカムをセットして、そこでイクオライズしてラビット・ノットを作ったロープをセットして完成。少々慎重にすぎるんじゃないかと思うんだけど、怖がりの僕にはこれくらい必要。次の問題は、岩のエッジをどうやって回避するか。リップの上の平坦な部分にアンカーを構築するので、ロープがエッジにかかることは不可避。そして、グリット・ストーンの質感は大根おろしみたいなものなので、ロープに荷重をかけるたびに、ロープが左右に振られるたびに、ジャリジャリとロープが削られる。今回は雑巾をエッジに被せることでごまかした。

この複雑な過程を僕の脳は十分に理解できていないようで、特にエッジに削られるロープへの不安が大きくて、ロープに体重をかけて動くことに恐怖感があった。日本にいた時は何度もやっていたことなんだけど、UKでは一度もやっていなかったので、なおさら。今回、二度ぶら下がって少しだけ慣れてきた。

で、ぶら下がって探った結果、ムーブは難しくて、ちびっこには少々辛く、プロテクションのセットは分からず、どうしたものか?グレードはE4 6Bだけど、ワイド・ボーイズのトムさんはE5と言ってるので、やっぱり難しいんじゃないだろうか。


Elder Crack

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=11080

Elder CrackはE2 5b。初登は1950年、Joe Brown。下部がうすかぶりで、上部は傾斜の落ちたコーナークラック。予想外にオフウィズスだった。ガイドブックにはでかいカムが有効と書かれてたので5番6番まで持っていってはいたけれど、登りはハンドくらいのサイズだと思っていた。オフウィズスは、ビレーデバイスを胸の位置にセットするロープソロには不向き。というか、やったことないのでどうなるか分からない。見合わせる他あるまいと思っていたところ、さっきのクライマーがビレーを申し出てくれた。ありがたくお言葉に甘えさせてもらって、登った。二人の登りを見てしまったのでオンサイトではないけど、このグレードのワイドを比較的スムーズに登れたのが嬉しかった。

といったところで、娘を学校からピックアップする時間が近づいてきたので、急いでギアを回収して、早足でで駐車場に向かった。

次は...


久々の日光を岩場で浴びることができて、幸せな時間だった。ただ、この季節の岩場は寒すぎる。気温は5度くらいだろうか?特に朝は岩がまだ冷えていた。さらに風もあってあっという間に体が冷えてしまった。やってられない。Eastern Gritの岩場はほとんどが西向き。朝日で温まる岩場を探すのはなかなか難しい。さてどうしましょう?


2019年11月12日火曜日

ボブ・マーレー・エクステンションを登った

この夏の終わりの記録。

日曜日から1週間のロンドン滞在が始まるということで、金曜日にはボブ・マーレー・エクステンションを登りに行ったが、ミッジーズに襲われて退散してきた。やむを得ない、しばらくクライミングはお預けだ、と思っていた土曜日の朝。予想外に気温は低く、強い風が南から吹いていた。

ボブ・マーレーのあるカウパー・ストーンは、ミッジーズの溜まり場だ。ミッジーズは夏場に現れる極小の吸血の羽虫で、どこからともなく大量に現れて人を襲う。あまりに数が多くて次から次に襲いかかってくるので、叩き落として撃退することはできない。夏の岩場でミッジーズを避ける唯一の方法は、風の強い場所を選ぶこと。

南向きのカウパー・ストーンにとって、南風は絶好の条件だ。しかも、太陽は薄い雲の後ろに隠れていて、気温もほどほど。これは行くしかない。

カウパー・ストーンは、Stanage Edgeというエリアに位置する。Stanage Edgeは3キロだか4キロだか知らないけど端から端が見えないくらい長大な岩壁が続くエリアで、ものすごい数のルートが設定されている。そんな長大なエリアの端の端にある牛の糞みたいな形をした岩が、カウパー・ストーン。

高さ10mくらいのカウパー・ストーンには水平のフレアした巨大なクラックが数本走っていて、その一番下のクラックを左から右にトラバースするのが、Zippatrocityという課題。この課題の後半はジャミングを駆使するクライミングだが、前半はフレアしたクラックが太すぎてジャミングはできず、スローパーをペシペシ叩くリップトラバースになる。Zippyというニックネームをもつクライマーが初登したクラシック課題だ。この動画を見れば、なんとなく雰囲気はわかってもらえるんじゃないかと思う。

 

このZippatrocityを逆流し、ついでにスタートにケービングを付け足す課題が、The Bob Marley Extention。初登は2007年、ワイド・ボーイズのトム・ランドール。

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=468613

スタートのケービングは、これまで数々の岩と岩の隙間に挟まってきた経験がバシッと決まって、簡単だった。前半のクラック・トラバースも即日解決。トムさんは、左→右トラバースのZippatrocityより難しいとコメントしているが、特に問題なし。気づいたのは、水平クラックのハンドジャムは吉田式が圧倒的な威力を発揮すること。虫様筋ジャムとは大違い。

中間部のスローパー・パートもムーブは問題なし。ただ、クラックからトラバースへの繋ぎでかなり苦労した。この動画の4:15のところで、トムさんは右手クロスでフィンガーを刺しているけど、これが僕の短い腕ではとても厳しい。トムさんのクロス一手で済むところを、5手を繋いで行ったり来たりを繰り返すことで解決した。ここのムーブを発見できたことで、課題の解決に向けて大きく前進することができた。



残るは最終局面。中間部後半のカンテを回り込んで、凹角に入って、そこからフィニッシュまで。ここもまた、吉田式ハンドジャムが水平クラックで威力を発揮した。あと数手で終わり、両腕がパンパンに腫れてどこまでいけるかという局面で、うまくいけがジャムで完全に脱力したレストができるというムーブを発見した。もっとも、非常に不安定な体勢からクロスでジャミングをキメることを要求されるので、最終的には確実にジャムをキメてレストすることは諦め、一瞬キマったジャムでごまかして先に進むことになったが。さらにその先でも、吉田式ジャムが圧倒的な優位性を示し、核心部である後半部を大いに楽にしてくれた。

この課題とはたくさんの時間をかけて向き合った。クラックからスローパーへの繋ぎのムーブ、後半のパンプの処理で大いに悩んで、ムーブを確実にものにしようと練習を繰り返し、その度にミッジーズに襲撃された敗退を繰り返した。最終的には、強い風と雲の力を借りて、ムーブを洗練させることは諦めて、勢いで押し切った。

この課題のグレードは7C。この数字を額面通りに受け止めれば、7B+を登ることなくグレードを更新したことになる。しかし、吉田ジャムを知ってしまえば、そこまでの難易度にはならないだろう。何を基準にグレードをつけるかという話になってくるので、数字には意味はなかろう。多分ワイドボーイズの二人くらいしか登ってないからグレードは未確定だろうし、これからも登る人はいないだろう。でも、こういう課題と向き合って自分のクライミングができることは、とても嬉しいことだ。