2023年6月16日金曜日

Rock & Snow 100号


ロクスの100号。


最大の注目は、成田啓「コイカクシュサツナイ沢冬季初遡行」だった。「登山のなかの合理的な手段として、アイスクライミングという行為がしたい」という明確なコンセプトは、「登山と切り離された」アイスクライミングがあたりまえの北海道では革新的である。そのコンセプトを実行に移すと、クライマーが求めていた通りに次から次に続く氷爆が現れ、求めていたはずのクライマーが「もう勘弁してくれ」と思うほど。もう最高の気分だったに違いない。僕はアイスクライミングはやらないけど、こんなクライミングをしてみたいと思わせる素晴らしい記事だった。

その他にもいろいろ。

イヴォン・シュイナードがクリーン・クライミングを一人で推し進めたことにしてロイヤル・ロビンスなんかをいなかったことにする相変わらず傲慢なパタゴニアの広告。


ロクスノ25年の歴史


山野井泰史=平山ユージ対談
年と共に変化があるが、自分にとってギリギリの高いところを捉えるのが得意という山野井さんの言葉。

進化し続ける秘訣・第5回、奥村優
なんか強いらしい。

小川山東股沢・七賢の岩場
稲田夫妻のルートとか、ミキペディアの植田さんの《ダイヤモンドルーフ》(5.12a)とか。岩場の混雑回避のためには、新しいエリアの紹介は歓迎すべきだろう。

楯ヶ崎・Yosemite Area
ジャミング紳士さんによるトラッドクライミングの新エリア紹介。

ナイスミドルな岩場・第16回・そうだ!「青海」があった

より高くなくより困難でもない岩稜&ルート案内
山口県・亀山「アルピナカンテ」「南峰見聞録」

クロニクル

クリス・シャーマ《Sleeping Lion》(5.15c)初登
セバスティアン・ベルト《Le Voyage》E10をフラッシュ
ジェームス・ピアソン《Bon Voyage》初登
ヤニック・フロヘ―《Return of the Dreamtime》(8C+)初登
ウィル・ボシ《Burden of Dreams》第2登
金峰山・千代の吹上・第二フェース・百八ルート 5.10b or 5.10c 5ピッチ 大平栄
瑞牆山・カンマンボロン《The Beautiful Mess》(5.12a)4ピッチ 135m 横山勝丘
など

追悼・檜谷清

水野圭介「マインドフルネス・メンタルトレーニングのすすめ」

二子山騒動のつづき
奥村晃史「二子を見て思うこと」
飯山健治ほか「R&S99に対する抗議文」
北山真「99号編集の顛末」
編集長・吉野徳生「抗議文を受けて」
ジャーナリズムについてしらなければ、前号のロクスノの対応の是非は判断できない。

アルパインクライミングを考える・第4回・剱岳と谷川岳における岩場の現状と今後に向けて 上田幸雄・菊池敏之

相澤元樹「東北ボルダー通信・第10回・岩手大船渡・吉浜ボルダー『暴れ馬』2級」

宮脇拓海「四国ボルダー通信第10回・高知土居川『ラブーン』三/四段」

倉島将吾「クライミングジムの未来・第15回」
早生まれが多いクライマーと生涯スポーツに関する示唆に富む考察

岡野寛「つらくて楽しいセッター稼業・最終回」

東秀磯「東秀磯のクライミングラボ・クライミング100年」

ジャック中根「帰ってきたかかってきなさい・第21回・禁断のムブ?『サイファー』の巻」
紐で繋いだボールの例はおかしいだろう。振る足の重さと体幹部の重さの比率を考えよう。

池田常道「ON THE SCENE・最終回」
ひっそりと最終回を迎えていた。ロクスノの転換点になるのだろうか?


2023年6月15日木曜日

ジョン・クラカワー『WILDERNESS AND RISK』

ジョン・クラカワー(井上大剛・訳)『WILDERNESS AND RISK 荒ぶる自然と人間をめぐる10のエピソード』(山と渓谷社、2023年)原著は2019年


アウトサイド誌で執筆するジョン・クラカウアーの初期の作品群。



「マーク・フー、最後の波」は、サンフランシスコのマーベリックスで命を落としたビッグウェーブ・サーファーのマーク・フー。


「火山のもとで生きる」は、火山の脅威にさらされる街。


「エベレストにおける死と怒り」は、登山ツアー産業とそれを支えるシェルパ。


「火星への降下」は、火星探索プロジェクトに向けて巨大ケーブに潜る科学者。


「転落のあと」は、シュイナード・イクイップメントの顛末。


「北極圏の扉」は、アラスカ北部に位置する「北極圏の扉国立公園」の現代社会からの隔絶。


「愛が彼らを殺した」は、荒野療法。


「穢れのない、光に満ちた場所」は、建築で現代社会に挑むクリストファー・アレグザンダー。


「フレッド・ベッキーいまだ荒ぶる」は、クライミング・バムとして生きるフレッド・ベッキー。


「苦しみを抱きしめて」は、世界の破滅。

2023年6月5日月曜日

上間陽子『海をあげる』

上間陽子さんの『海をあげる』を読んでたら、ところ構わず花を摘むおばあちゃんが「ひとの花を取るのは泥棒だよ」と諭されるシーンに出会った。場所によるのだろうけど、例えば山では植物をとってはいけないことになってるが、これを「ひとの花を取るのは泥棒だよ」で説明するのは無理だろう。


山の花にもたいていの場合は所有者はいるが、その所有者が「花の所有権を侵害された」と主張するとは考えにくい。むしろ、山で花をとってはいけないことは、花は誰のものでもない、あるいは、花はみんなのものだ、というロジックで説明されるんじゃないか。


街のロジックと山を含む自然の中のロジックは、違う。クライミングの魅力の一つがそんなところにあるのだということは疑いようがない。世間の常識をクライミングに持ち込む動きに対しては断固として争わなければならない。しかし、世間の常識の力は強く、それは容易ではない。

Wright’s Rockの立入禁止と、Right to roam

 Peak District 南部のChurnetに位置するWright’s Rockが、度重なるクライマーによるルール違反を理由に立ち入り禁止とのニュース。

https://www.ukclimbing.com/news/2023/05/new_access_ban_at_wrights_rock_due_to_rule-breaking_climbers-73336



このニュースに関し、Dave Perry 氏は5月22日のPennine Linesにおいて、非現実的なルールを押し付けてきた土地所有者を問題にする。長年誰もがアクセスしてきた自然を、新たな土地所有者が自分と友人だけで独り占めすべく、現実的でないルールを押し付けているのであり、立ち入り禁止は時間の問題だっただろうと。そして、土地所有者が自然を独占的に支配する制度に疑問を投げかける。スコットランドではこんなことにはならないと。 

https://www.penninelines.com/about


登攀禁止のニュースと時を同じくしてUKCに掲載されたのが、労働党がイングランドにもスコットランド式のRight to roamを取り入れる方針とのニュース。

https://www.ukclimbing.com/news/2023/05/labour_promises_right_to_roam_for_england-73338


Right to roamについては以下参照。

https://www.righttoroam.org.uk/?utm_content=link3&utm_campaign=news_id_73338&utm_medium=news_post&utm_source=ukclimbing



Right to roamと関連するKinder mass trespassについては、とりあえず以下のサイト。

https://kindertrespass.org.uk/kinder-mass-trespass-history/