2019年11月12日火曜日

ボブ・マーレー・エクステンションを登った

この夏の終わりの記録。

日曜日から1週間のロンドン滞在が始まるということで、金曜日にはボブ・マーレー・エクステンションを登りに行ったが、ミッジーズに襲われて退散してきた。やむを得ない、しばらくクライミングはお預けだ、と思っていた土曜日の朝。予想外に気温は低く、強い風が南から吹いていた。

ボブ・マーレーのあるカウパー・ストーンは、ミッジーズの溜まり場だ。ミッジーズは夏場に現れる極小の吸血の羽虫で、どこからともなく大量に現れて人を襲う。あまりに数が多くて次から次に襲いかかってくるので、叩き落として撃退することはできない。夏の岩場でミッジーズを避ける唯一の方法は、風の強い場所を選ぶこと。

南向きのカウパー・ストーンにとって、南風は絶好の条件だ。しかも、太陽は薄い雲の後ろに隠れていて、気温もほどほど。これは行くしかない。

カウパー・ストーンは、Stanage Edgeというエリアに位置する。Stanage Edgeは3キロだか4キロだか知らないけど端から端が見えないくらい長大な岩壁が続くエリアで、ものすごい数のルートが設定されている。そんな長大なエリアの端の端にある牛の糞みたいな形をした岩が、カウパー・ストーン。

高さ10mくらいのカウパー・ストーンには水平のフレアした巨大なクラックが数本走っていて、その一番下のクラックを左から右にトラバースするのが、Zippatrocityという課題。この課題の後半はジャミングを駆使するクライミングだが、前半はフレアしたクラックが太すぎてジャミングはできず、スローパーをペシペシ叩くリップトラバースになる。Zippyというニックネームをもつクライマーが初登したクラシック課題だ。この動画を見れば、なんとなく雰囲気はわかってもらえるんじゃないかと思う。

 

このZippatrocityを逆流し、ついでにスタートにケービングを付け足す課題が、The Bob Marley Extention。初登は2007年、ワイド・ボーイズのトム・ランドール。

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=468613

スタートのケービングは、これまで数々の岩と岩の隙間に挟まってきた経験がバシッと決まって、簡単だった。前半のクラック・トラバースも即日解決。トムさんは、左→右トラバースのZippatrocityより難しいとコメントしているが、特に問題なし。気づいたのは、水平クラックのハンドジャムは吉田式が圧倒的な威力を発揮すること。虫様筋ジャムとは大違い。

中間部のスローパー・パートもムーブは問題なし。ただ、クラックからトラバースへの繋ぎでかなり苦労した。この動画の4:15のところで、トムさんは右手クロスでフィンガーを刺しているけど、これが僕の短い腕ではとても厳しい。トムさんのクロス一手で済むところを、5手を繋いで行ったり来たりを繰り返すことで解決した。ここのムーブを発見できたことで、課題の解決に向けて大きく前進することができた。



残るは最終局面。中間部後半のカンテを回り込んで、凹角に入って、そこからフィニッシュまで。ここもまた、吉田式ハンドジャムが水平クラックで威力を発揮した。あと数手で終わり、両腕がパンパンに腫れてどこまでいけるかという局面で、うまくいけがジャムで完全に脱力したレストができるというムーブを発見した。もっとも、非常に不安定な体勢からクロスでジャミングをキメることを要求されるので、最終的には確実にジャムをキメてレストすることは諦め、一瞬キマったジャムでごまかして先に進むことになったが。さらにその先でも、吉田式ジャムが圧倒的な優位性を示し、核心部である後半部を大いに楽にしてくれた。

この課題とはたくさんの時間をかけて向き合った。クラックからスローパーへの繋ぎのムーブ、後半のパンプの処理で大いに悩んで、ムーブを確実にものにしようと練習を繰り返し、その度にミッジーズに襲撃された敗退を繰り返した。最終的には、強い風と雲の力を借りて、ムーブを洗練させることは諦めて、勢いで押し切った。

この課題のグレードは7C。この数字を額面通りに受け止めれば、7B+を登ることなくグレードを更新したことになる。しかし、吉田ジャムを知ってしまえば、そこまでの難易度にはならないだろう。何を基準にグレードをつけるかという話になってくるので、数字には意味はなかろう。多分ワイドボーイズの二人くらいしか登ってないからグレードは未確定だろうし、これからも登る人はいないだろう。でも、こういう課題と向き合って自分のクライミングができることは、とても嬉しいことだ。

2019年10月22日火曜日

懸垂・ビレイ用安全環付きカラビナを考える2019

懸垂・ビレイ用安全環付きカラビナを考えたのは、2017年のことだった。

その時に有力だったグリベル・クレプサイドラK10Gツインゲートカラビナを購入してずっと使っていて、とても満足していた。しかし、ツインゲートカラビナを使用したトップロープ・クライミングにおいてカラビナがビレイループから脱落するという事故が発生して、ツインゲートの信頼性に疑問が生じた。クレプシードラに死角はないと書いたんだけど、死角はあった。ごめんなさい。

ということで、改めて考えてみようという企画。

選択の条件は前回と同じ。

必須の条件として、

1. スクリューを閉める必要がなく、自動で閉まってくれること
2. 作業中にゲートが不意に開く恐れがないこと
3. マイナー・アクシスが発生しないこと

追加的に欲しいものとして、

4. ビレイ・デバイスをセットする作業が面倒でないこと

では始めましょう。

BD グリッドロック・マグネトロン





条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◯
条件3(マイナーアクシス防止)  ◎
条件4(作業が楽)        △

条件1、3は完璧。2がちょっと心配。ツイッターで頂いたコメントでは、経験なしとのこと。ロクスノのギアオタクでは問題なしと書かれてたような気がする。4はちょっと面倒。ビレイ・デバイスをセットするときにセパレーターからビレイ・ループが外れることがあって、再度セットするためにゲートをもう一度開かないといけないことがある。ゲートを開くのはとても簡単そうだけど。

エーデルリッド HMSストライクセーフロック

条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◯
条件3(マイナーアクシス防止)  △
条件4(作業が楽)        △

条件1は完璧。2は、セパレーターがゲートに付いて二重ロックになっているので、不安はなさそう。ただし、セパレーターを上に跳ね上げる方式なので、ビナがビレイ・ループに向かって押されると、ビレイ・ループがセパレーターを押し上げて外れる可能性あり。その時にロックが解除されてゲートが不意に開く可能性が、ないわけではない。3も同じ理由で、ビレイ・ループがセパレーターを押し上げて開いてしまえば、マイナー・アクシスの可能性はあり。4は、セパレーターを押し上げるのが少々面倒で、ビレイ・デバイスのセット時の作業が一つ増えてしまう。

エーデルリッド HMSブレットプルーフトリプルFG



条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◎
条件3(マイナーアクシス防止)  △
条件4(作業が楽)        △

条件1、2は完璧。4は、セパレーターを押し上げるタイプなので、ビレイ・デバイスのセット時の作業が一つ増えてしまう。3も、セパレーターが押されてビレイループがセパレーターから外れる可能性あり。

SALEWA(サレワ)ビレイツイストロックカラビナ


条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◎
条件3(マイナーアクシス防止)  △
条件4(作業が楽)        △

基本的に上と同じ。

グリベル クレプサイドラK10Gツインゲートカラビナ

http://www.edgeandsofa.jp/fs/edgeandsofa/cat374/gd00366




条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◯
条件3(マイナーアクシス防止)  ◎
条件4(作業が楽)        ◎

条件1、3、4は完璧。前回不安があった4も、使ってみたら全く問題なく快適だった。ただ、肝心の条件2が不安あり。例の事故は、二枚のゲートの間に何か(例えばビレイループの出っ張りとか)が挟まるとゲートが開くのが原因じゃないかと推測されている。事故のあったタイプ(ノーマルゲートとワイヤーゲートの組み合わせ)と違って、これは隙間がごくわずかなので、不意に開く可能性は小さい。とはいえ不安はあり。

グリベル クレプサイドラS ツインゲートカラビナ



条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) △
条件3(マイナーアクシス防止)  ◎
条件4(作業が楽)        ◎

K10Gのスモール・バージョン。基本的には同じ構造だけど、ゲートがノーマルとワイヤーの組み合わせなので隙間が大きくて、何かが挟まって不意に開く可能性がより大きい。

マムート バイオニック・クロスロック



条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◎
条件3(マイナーアクシス防止)  △
条件4(作業が楽)        ◎

(多分)インターナショナル・ウェブサイトにはないのに日本のウェブサイトにはあって売り切れになってるという謎の商品。条件1、2、4は完璧。死角はないかと思いきや、以下の動画を見るとわかる通り、セパレーターが上下双方に開く仕組みになっているので、不意に開いてビレーループが外れる可能性あり。余計な機能をつけたものだ。惜しい。



DMM Ceros Locksafe

https://dmmclimbing.com/Products/Locking-Carabiners/Ceros



条件1(ゲートが自動でロック)  ◎
条件2(ゲートが不意に開かない) ◎
条件3(マイナーアクシス防止)  ◎
条件4(作業が楽)        ◎

2017年には(多分)なかった新顔。DMM Cerosには三種類あって、通常の手動スクリューゲートのScrewgate、ダブルアクションのKwicklock、トリプルアクションのLocksafe。一番安心なのがLocksafe。自動でゲートが閉まるので、条件1は完璧。トリプルアクションで条件2も完璧。セパレーター押し下げ方式で、条件3も完璧。自動で閉まるゲートと押し下げ式セパレーターが合間って、条件4も完璧。ということで、セロス・ロックセーフに死角はない!


2019年9月23日月曜日

Pecomaさんがやってきた

スコットランド旅行帰りのPecomaさんがシェフィールドに立ち寄ってくれたので、一緒にクライミング。

初日


Stanage Popular




断水により学校が休みになった娘(9)を連れて、Stanage Popular。ここは、The most popular section of the most popular crag in UK。外せないエリアです。登ったのは、Flying Buttress HVD 4a、Leaning Buttress Direct HVS 5b、Flying Buttress Direct E1 5b。僕は全部フォロー。この中ではFlying Buttress Directがやはり素晴らしい。どっかぶりで、ホールドは全部ガバで、ヒールフックとか使って、豪快に登る。そんなトラッド。日本にはこんなルートは一本もないと思う。

Raven Tor




お昼ご飯を食べて、娘(9)を町まで戻したのち、雷雨の予報を受けて、雨でも登れる石灰岩ボルダーを選択した。行き先は、石灰岩スポーツルートの総本山であり、石灰岩ボルダーの総本山でもあるRaven Tor。ここではまずChimes Start 6Bを登った。それからPecomaさんがWeed Killer Traverse 7Bを登ったところで、夕日のさすエリアは暑いので別のところに移動することにした。

Lees Bottom




Lees Bottomは比較的新しくてマイナーな石灰岩ボルダー。北向きの岩場はそれなりに涼しい。It Buzz Me 6Bというブラキオポッドの化石をホールドにする超面白い課題を登った。それから、前回きたときに敗退していたGoose Grease 7Bを完登。これは超嬉しい。



晩御飯をパブで食べて解散。

二日目


Millstone Edge




お昼に用事があったので、朝PecomaさんをクラッシュパッドとともにStanage Plantationでドロップ・オフ。子供を学校からピック・アップしたのちに、再度集合してクライミング。石切り場のクライミングをやってみようということで、Millstone Edgeで登ることにした。

晩御飯をOutsideのカフェで食べてから登ろうと思ったけど、食事は終わっていたので、プランBでCalverのSparで買い物をして岩場で食べた。ここのSparは地域の名産品に力を入れているちょっと特別なSparなので、ピークディストリクトを訪れる人にはオススメ。フォカッチャが美味しいのと、サラダバーが栄養補給に最適。



トラッドやろうということで、まずはPecomaさんがThe Mall VS 4cをリード、僕がフォロー。快適なクラックで超いいルート。上部でちょっとしたハングをフィンガージャムをキメて越えるところがあって、ピリッと刺激もあって楽しい。そのあと、Great Portland Road HVS 5bを僕がリード、Pecomaさんフォロー。出だしがひどい。超難しい。しかもプロテクションから脇にそれるからグラウンドの可能性あり。そこを越えたら楽しいコーナーのステミングが続く。最後は僕は左の簡単な方に逃げたけど、Pecomaさんはコーナーを直上で押し通した。さすがである。プロテクションのセットに戸惑ったのが反省点。岩の上でのビレーの構築も手間取った。



あまり時間もないということで、最後はボルダリング。Technical Master 6BをPecomaさんが登って、Green Death Superdirect 7Bに僕は敗退した。

三日目


丸一日予定が空いていた三日目、天気が悪そうってことで、ボルダリング。

Cowperstone




まずはCowperstoneで、僕はThe Bob Marley Extension 7Cを、PecomaさんはZippatrocity 7B+をやった。僕はジャムパートからスローパーパートに移る最後にして唯一のフィンガージャムをキメることができず、敗退。Pecomaさんもスローパーパートが繋がらず敗退。風が止んでミッジーズがやってきたので終了。

Burbage South


お昼をOutsideのカフェで食べながら村のパレードを見学し、午後はBurbage Southでボルダリング。まずはHanging Prow。立ちで6Cでシットで7A+だけど、シットにしても何の強度も加わらない謎設定。ミッジーズも出てきて、敗退。

次はPebble Mill Stem 7A。絶妙なグルーブをトラバース。ムーブがわからなかったけど、打ち込めば面白い気がする。ミッジーズがうるさかったので、移動。

最後にPecomaさんがミッジーズが飛び交う中で7 Ball 6Cを登った。

西からの風がBurbage Valleyを吹き抜けて快適に過ごせると予想してBurbag Southを選んだんだけど、失敗だった。実際には無風でミッジーズがひどかったので、ここでフィニッシュ。

四日目


Stanage Plantation


午前中に家族の用事をすまで、午後集合。お気楽トラッドやろうってことで、Stanage Plantationに向かった。



The Right Unconquerable HVS 5a、The Left Unconquerable E1 5c、Millsom's Minion E1 5b、Goliath's Groove HVS 5aの四本をPecomaさんがリード、僕がフォロー。The Right Unconquerableは1949年ジョー・ブラウン初登のクラシック。リードだったらマントルが怖くてなお面白そう。The Left Unconquerableは不確実な振られるムーブが出てきて、ちょっと難しい。Millsom's Minionはプロテクションが限られ、かつムーブが読めない、次のホールドが見えないスラブで、ピリッとした緊張感を味わってもらえたんじゃないかと思う。Goliath's Grooveは言わずとしれた超爽快なコーナークラック。ちなみにこれ、四本ともイースタン・グリットのTop50である。星の荒稼ぎ。全部超いいルート。

Higgar Tor


Goliath's Grooveでミッジーズが増えてきたので、場所を変えて風を求めてHiggar Tor。The File VS 4cを僕がリード、Pecomaさんフォロー。バチ効きのハンドジャムが終始続く爽快なルート。だが、例によってビビりまくってプロテクションのセットに手間取った。そして、予想に反してミッジーズはとても多かった。

もはやミッジーズを避けるすべはなかろうということで、最後にパブでご飯を食べながら歓談をして、フィニッシュ。

何とも楽しい数日間であった。

2019年8月10日土曜日

2019年5月から7月のボルダリング

5月上旬 Burbage South


友達とその友達とボルダリング。Your Basic Mantle 6C、7 Ball 6Cを登った。

5月上旬 Rivelin


朝1時間弱、Boffwidth。ワイド登りで7A。フィストがスカスカで超厳しい。また今度。

5月中旬 Shipley Glen


Red Baron 7A+、 Smear 6A、Vim 6 A+を登った。Manson's Wall 6Cに敗退した。

5月中旬 Rivelin 


2度目のBoffwidth。またもや敗退。隣のMini Beakをやったら、あっという間に指皮がなくなった。

5月中旬 RA


Worse Habits sit start 6A+、Habitus sit start 6Bを登った。Faith Left Hand 7A+が登れなかった。

5月下旬 Curbar


友達と一緒にWalk on By 7C。右のほうのサイドプルを保持するところまで行った。

5月下旬 Curbar


Walk on By 7C。左手を持ち替えて、左足を上げるところまで。

5月下旬 Anston Stone Wood


https://www.ukclimbing.com/logbook/crag.php?id=953

二家族合同ピクニック&ボルダリング。Grape Crusher 6C、Trench Warfare 6B、Unnamed 7A、Blue Circle 7A、Last Stand 7A、Blind Bat 7A+を登った。

5月下旬 Burbage North


Definitive 5.12 6Cを登った。

5月下旬 Ramshaw


Melvyn Braggは乾きが悪い。Force Nineはいいスラブ。Night of Lust Startは膝に悪い。

5月下旬 Burbage South Edge


Definitive 5.11 6C+、疲れて登れなかった。

6月上旬 Anston Stone Wood


ピクニック&ボルダリングで適当に。Dark Art 8Aは離陸が厳しく、いまいち。

6月上旬 Burbage South Edge


Definitive 5.11 6C+を登った。

6月上旬 Yarncliffe


THEM!を少しだけやった。蟻がいなくなる冬を待つ?

6月上旬 Raven Tor


Powerbandの最後のムーブの検討。今一歩。

6月中旬 Burbage South 


The Kursk 6C。雨の合間でクラックの下部はびしょ濡れだったけど、何とかなった。

6月下旬 Higgar Tor & Sheepfold


娘に付き合ってもらって夕刻のボルダリング。

Higgar Torで隙間P。フットホールドがちょうど良い感覚で見つかって、残念ながら思ったより簡単だった。6Bくらい?

時間があったのでSheepfoldまで足を伸ばして、Your Horse is Dead 7A。短いけどシンハンドでの大きなムーブが厳しい水平ルーフ。結構苦労して完登。

6月下旬 Stanage


Cowper StoneでThe Bob Marley Extension 7Cのムーブ探りを小一時間。後半のムーブはできたけど、完全な持久系で、最後の方に不安定なムーブが一つあるので厳しいかもしれない。

6月下旬 Stanage


天気が良かったので、夕刻、Cowper Stoneで家族とピクニック。The Bob Marley Extension 7Cのムーブ探り。ムーブは全部できたけど、果たして繋がるのかどうか。

7月上旬 Stanage, Raven Tor & Lees Bottom


ゲスト二人を迎えて、Stanage。二度目のGreen Traverseと二度目のNot to Be Taken Awayを登った。二日目は、Millstone EdgeでTechnical Masterを登って、そのあとはRaven TorとLees Bottom。Goose Grease 7B、敗退。

7月上旬 Stanage & Squirrel Buttress


CowperstoneでThe Bob Marley Extension 7C。後半が繋がった。そのあとは、Squirrel Buttress。

7月中旬 Raven Tor, Lees Bottom, Millstone Edge, Cowperstone & Burbage South

ゲストを迎えて、クライミングした。


Climbing at Slate Quarries:スレートの石切り場のクライミング

ニールさんに誘ってもらって、North Wales(北ウェールズ)のスレートの石切り場でのクライミングを再び体験する機会を得た。スレートの石切り場は、クライミングが面白いのはもちろんのこと、クライミング抜きでも超楽しい。グレート・ブリテン島で一番いいところなんじゃないかと思う。それにもかかわらず日本語の情報はほとんどないので、ここにメモを残しておく。


アクセス


スレートの石切り場があるのはウェールズの北部。おそらく、マンチェスターの空港からアクセスするのが便利。車で2時間くらいだと思う。あるいはリバプールでもいいのかもしれない。ヒースローからは車で5時間くらいなので、乗り継ぎの煩わしさとリスクを考えると、運転が苦でない人はヒースローから車でアクセスしてもいいだろう。

観光情報


城巡り


まずはウェールズの歴史を感じる城巡りに出かけよう。北ウェールズにはイングランド対ウェールズの戦いの舞台となった中世の城がある。今の感覚でいうとロンドンに近い南ウェールズが戦いの舞台になりそうなものだが、イングランドの軍勢はチェスターから北ウェールズに攻め込んだらしい。その歴史を知ると、UKの皇太子がPrince of Walesと呼ばれる理由もわかって来る。

特に重要な城の4つがConwy、Caernarfon、Beaumarisともう一つどこからしい。Conwyは地形と城壁が守りを固めているのが理解できてとてもいい。Caernafonも堅固さを感じられてすごくいい。Beaumarisはまあまあ。

ウェールズの城だとかアビーだとかを巡ることができるパスがあって、超オススメ。
https://cadw.gov.wales/visit/places-to-visit/admissions

ビーチ


天気が良ければ、ぜひビーチを訪れたい。北ウェールズのビーチは広くて美しい。Llandudnoは典型的なUKのビーチリゾートらしく、80年代に貧乏なクライマーが万引きして警察に追いかけられた街を散策するという楽しみもあるようだ。落ち着いたビーチがお好みの方は、Anglesey Islandがオススメ。僕はグーグルマップで見つけたTraeth Lligwyというビーチに行った。引き潮の時は海がはるか先まで遠ざかって広大な砂浜が現れる。超いいところだった。なお、UKの海は全般的に言って生き物は少ないのが残念。

スレートの岩場はSnowdoniaという山岳地帯の端にあって、天候は少々不安定だ。岩場は雨だが北の空を見ると青空が見えるということはよくあるみたい。海がキラキラ光って、その先にはAnglesey Islandが見える。そんな時なクライミングを切り上げてビーチに向かうのもいいだろう。

Welsh Food Center

https://www.bodnant-welshfood.co.uk

ウェールズもイングランド同様飯はうまい。ウェールズの食品を扱う小さなフードセンターに行くと、ウェールズの食に触れることができる。チーズは特に品揃えがいい。あと、肉製品も良さそう。美味しいパンも手に入る。僕が行った時にはその他はイマイチな感じだったけど、その後オーナーが変わったようで、もっといいところになっているかもしれない。

National Slate Museum

https://museum.wales/slate/

いよいよスレートに近づいてきた。スレートの岩場はLlanberis(ランベリス)という街のすぐ脇にある。その街のはずれにあるのが、National Slate Museum。スレートの石切り場の歴史に触れることのできる素晴らしい博物館だ。北ウェールズを訪れるのであればここは絶対に外せない。スレートの岩場に向かう前にぜひ訪れておきたい。スレートの岩場で目にする様々なものをよく理解できるはずだ。

Snowdon Mountain


スレートの岩場のあるSnowdoniaという山岳地帯の誇る山が、Snowdon。ウェールズの人は、ここがUKで最も美しい山であるという誇りを持っている。UKで一番高い山はスコットランドにあるが、一番美しい山はウェールズにあると。ぜひ登っておきたい。山といっても日本の基準からしたら大したことはなく、ハイキング程度。ハイキングルートはいくつかあるようだ。クライマーはみんな歩くのは嫌いだろうから、そういう人はLlanberisの街から汽車に乗ってしまおう。Snowdon Railwayが山頂まで運んでくれる。

https://snowdonrailway.co.uk


スレートの岩場


北ウェールズの海と山と食を満喫したところで、いよいよスレートの岩場に向かおう。岩場はLlanberisの街のすぐ脇だが、アプローチは反対側から。車で近寄った時点で度肝を抜かれること間違いなし。Bus Stopに車を置いて、水平のアプローチだ。


まずは歩きながら耳をよくすませてみよう。地面に散らばったスレートの破片を踏んで歩くと、カランカラン、チャリンチャリンと楽しい音が響く。それから、足元のスレートの破片を見ると、時々エメラルドグリーンの模様が入ったスレートを見つけることができる。美しいスレートの破片を探すのも、楽しみの一つ。

クライミングエリアもすぐそこだが、登るのはまだはやい。まずは壮大な景色を堪能し、それから残された石切り場の施設にも目をやろう。いくつかの小屋には石切り場が閉鎖された当時の道具が未だに残っている。石切り場全体が博物館のようなものだ。石切り場の労働者をモデルにしたアートが各所にあるので、探してみよう。


可愛らしい植物を眺めるのも良い。


クライミング


ガイドブック


スレートの岩場は構造が複雑で、幾層にも別れた岩場が階段やトンネルで繋がっている。地図がなければあっという間に迷子になれるが、クライミングのガイドブックがあれば大丈夫。


2018年にはRock Fax社から新しいガイドブックが出た。例によって、とてもわかりやすいけれど、インタビューとか歴史とかの記述はない味気ないガイドブック。

情緒たっぷりのガイドブックがGround Upから2011年に出ているけれど、今は入手できないようだ。
https://www.ukclimbing.com/logbook/books/llanberis_slate-1370

ルート


スレートの岩場には、トラッド・ルートとスポーツ・ルートが共存している。それも、エリアごとに別れているというわけでもなく、トラッド・ルートのすぐ隣にスポーツ・ルートがあったりする。さらに、Eグレードが付いているにも関わらず、部分的にボルトが打たれているルートもあってそのエシックスを理解することは難しい。ここでは難しいことを考えるよりも、クライミングとして面白いものを登るのが正解だろう。

スレートの特徴は、フリクションのないツルツルの岩質。その岩質を堪能できるスラブはぜひ登っておきたい。それから、スパッと切れたカンテも面白い。カンテはスポーツルートが中心になるだろう。あと、コーナー。フリクションがないのでレイバックに逃げるのが厳しくて、面白いクライミングになる。最後に、ぜひ注目してもらいたいのが、人工物の存在。この地でクライミングが始まる前の石切り場の時代の人工物がルート上にも残されていて、それをホールドにしたり、プロテクションにしたりする。スレートの岩場ならではのクライミングなので、そういうルートはぜひ登っておきたい。

では、おすすめルートのご紹介。



岩場に横たわる錆びた送水管からスタートするスラブ。かつてはもう一本の送水管の上をトラバースしてから直上だったらしいけど、その送水管は下に落ちてしまったので、今は普通のトラバース。トラバースした先に巨大な錆びたチェーンがぶら下がっていて、そこにスリングを回してプロテクションにする。スレートの岩場らしいルート。

Pull My Daisy E2 5c

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=6611


スラブのトラッドルート。中間部まではシンクラックにスモールナッツだのスモールカムだのをねじ込んで登る。ルートの3分の2くらいのところに鉄の棒が刺さっていてそこにスリングを巻いてプロテクションにしたら、あとはひたすらランナウト。これもスレートの岩場らしいルート。レインボーという超有名な岩にあるのも良い。

Dinorwig Unconquerable E3 5c

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=8163


ガイドブックに'Indian Creek comes to the slate quarries'と書かれているルート。シンハンドのコーナークラックで、クラックの外にはホールドが全然ないので、ひたすら手とつま先をクラックにねじ込み続ける。

German Schoolgirl E2 5c

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=8262


閉じたコーナー。コーナーの脇にシンクラックが走っていて、そこにスモールナッツをねじ込んで登る。ガイドブックには'well protected by wires'と書かれている。極小ナッツを信じるか否かはあなた次第。

とうことで、超楽しいスレートの石切り場のクライミングを紹介した。本当に超楽しいので、ぜひ登りに行ってもらいたい。





ここから先は個人的メモ。今回登ったルート。

German Schoolgirl E2 5c オンサイト
Dinorwig Unconquerable E3 5c 初めてのE3、オンサイト
G'Day Arete 6c たぶんUKで初めてのスポーツ・ルート、オンサイト


2019年7月10日水曜日

カムを3本なくしかけた:プロテクションの回収とスタック防止について考える

この前のスレートの岩場のクラックでプロテクションの回収とスタック防止について考える機会を得た。というのも、1本のルートでカムを3本もスタックさせて失うという大事故を起こしかけたから。

この機会に、回収方法とスタック防止方法について考えておきたい。ちなみに、ここに書くことは、トラッド・クライミングを誰かにちゃんと教えてもらってやってる人にとってはごく当たり前のことかもしれない。僕は完全に独学でやってるので、当たり前の知識が備わっていない。主として自分のためのメモとして残したい。

3本のカムがスタックした状況、事後対応、事前予防策を順番に整理しよう。

ケース1:タイトセット


  • 状況

黄色のC4。タイトセットしたカムがスタックして、トリガーを引いても出てこないケース。これはトラッドをやってる人の多くが経験したことのある話しだと思う。

  • 事後対応

(1)スリングに輪を二つ作る(なんでもいいけど、ラビット・ノットあたりがいいかも)、(2)輪をトリガーに一つづつかける、(3)輪の反対側をハーネスのビレイループに連結する、(4)スリングにぶら下がってトリガーに全体重をかける。これが僕の定番の対応で、多分トラッド・クライマーはみんなやってる。

今回もこれで回収成功。

  • 事前予防策

タイトセットでスタックの予防策は、タイトセットしないこと。いうまでもない。しかし、カムの番手の中間サイズのクラックで、タイトセットするか、ゆる目にセットするかは悩みどころ。僕はかつて、「スモールカムについては常にタイトセットなんだけど、ハンド以上になるとユルユル」という指摘をいただいたことがあって、大きめのカムのセットは気をつけるようにしていて、それで今回のような事態になったというわけ。個人的な感覚としては、ユルユルでカムが抜ける心配をするより、タイトにセットして安心した方がいい。タイトセットでスタックしたカムは多分上記の方法で大抵回収できるから、問題なし。スタックを恐れずブチ込むのが正解。


ケース2:ルーフの抜け口


  • 状況

緑(か黒?)のマスターカム。ルーフの抜け口にセットしたカムがウォーキングで奥に入っちゃったケース。今回は随分奥に入って、カラビナまでクラックの中に吸い込まれ、しかもクラックはシンハンド・サイズで、ロープのアンクリップさえ危ぶまれたくらい。

真ん中のカムが奥に入っちゃった

  • 事後対応

奥に入ったカムは、緩めのセットだった。奥に入りすぎて、クラックに手が入らず、一本目と同じスリング・メソッドは使えなかった。そこで、スリングの先にカラビナを一枚つけて重りにして、それをクラックの中のカムのさらに奥を目がけて投げ入れた。そしたら、狙い通りにスリングがカムローブに引っかかって、カムはポロっとルーフの下に抜けてきた。

  • 事前予防策

リード&フォローの時はこのケースが起こるとフォローが登れなくなるので、事前予防がとても大事。

ルーフの抜け口のカムが奥に入るのは、その部分でロープが屈曲していて、ロープが上に引かれるたびにウォーキングするから。



予防策(1)としては、この屈曲の角度をなるべく少なくするために、ルーフ下のプロテクションを延長するとか、セットの位置を下げるとか。そうするとそこまで奥には入らないような気がする。


予防策(2)としては、ロープの動きを少なくすること。ロープの動きが激しいと、屈曲部のカムが大きく振られてウォーキングしてしまうので、ルーフを超えたらクリップ時のロープの引き込みはソフトに。少しは予防になりそうな気がする。しかし、落っこちそうになりながらクリップするときにそんな配慮ができるかは知らない。あと、リードの最中にはウォーキングしなくても、フォローが登ってる最中にウォーキングする可能性もあるから、フォローのビレーも張りすぎないようにした方がいいかもしれない。しかし、フォローが怖い思いをしそうだから、判断が難しい。

ケース3:1本目のカム


  • 状況

青のマスターカム。1本目のカムがウォーキングで奥に入っちゃったケース。トリガーがクラックの中に入っちゃって、フィンガーサイズだからトリガーを引けず、回収不能。これも多分、トラッドをやってる人は一度は経験したことのある良くあるやつ。



  • 事後対応

色々やろうとしたけど、結局回収できなかった。初めてのカム・ロスト。ナッツキーがあればなんとかなったかもしれないけど、離れた場所に置いてきちゃってたので使えず、断念。無念。

  • 事前予防策

ウォーキングの原因はロープが屈曲することなので、予防策(1)はもちろん、ビレイヤーが1本目のカムと2本目のカムを結ぶ直線上に立つこと。しかし、諸々の事情でそれができないことはよくある。レッジに上がってスタートとか、落石の恐れがあって離れてたいとか。

予防策(2)は、ケース2のルーフの抜け口と同じで、クリップするときにロープをソフトに引き込むこと。それができるかどうかは知らない。

予防策(3)は、カムのウォーキングが起こりやすい1本目のプロテクションにはカムを使わないこと。ここでナッツは最悪で、ロープの屈曲部ではいともたやすく抜ける。ジッパリングっていうのかな?やはり、カム効果のあるプロテクションでないといけない。そこで考えられるのが、トライカム。カム(というかスプリング・ローデッド・カミング・デバイス)と違ってウォーキングはせず、ナッツと違ってパラレルでも効く。

1本目のプロテクションはトライカムでいこう(効果は保証しません)。

考察は以上。ひとまずの仮説であって、正しいかはわかりません。コメント歓迎。

2019年6月19日水曜日

Stanage Popularでやさしいのを四本

普段はボルダラーの友達がイタリアでトラッドのマルチをやるに際してちょっとギアに慣れておきたいってことで、二日間にわたりトラッドに行ってきた。行き先はStanage Popular。The most popular section of the most popular crag in the UKらしい。

初日は、Right Twin Crack VS 4c。初登は1950年代。トラッドが久々の友達が途中で降りてきたので、途中までロープがかかってる状態から、僕が登った。やはりトラッドはメンタル。とうか、慣れか。僕は核心部にカムを二本足すことで心理的障壁を下げて突破した。核心部は真っ向勝負のジャムが求められて超楽しい。

で、登ってる最中から雨が降ってきて、初日はここで終わり。奇跡的な風向きによりルートは濡れずに済んだので一本登れてよかった。

二日目は、Manchester Buttress HS 4bから。初登は何と1930年代。僕はフォロー。左にトラバースして右にトラバースしてと、顕著な岩の膨らみの弱点をぬって露出したムーブを繰り返す超ナイスなルートだった。

次は、Narrow Buttress VS 4c。初登は1949年。これまた顕著な岩の膨らみの弱点を突くライン。スラブに水平のクラックが走ってるんだけど、プロテクションのセットは限定されていて、随分ランナウトする上に、受け付けてもらえるプロテクションがマスターカムの紫とか青とかで、結構緊張する。最後にキャメ青を叩き込んで安心した後に、ハングを超えての露出感満点のマントルが待っているという最高に爽快なクライミングだった。

最後は、Inverted V VS 4b。初登は何と1922年!僕は前にリードしているルートで、今回はフォロー。RockfaxのEastern GritのTop50に選ばれているルートで、やっぱり良い。

ということで、短時間だったけど、久々にトラッドを楽しんだ。