2019年7月10日水曜日

カムを3本なくしかけた:プロテクションの回収とスタック防止について考える

この前のスレートの岩場のクラックでプロテクションの回収とスタック防止について考える機会を得た。というのも、1本のルートでカムを3本もスタックさせて失うという大事故を起こしかけたから。

この機会に、回収方法とスタック防止方法について考えておきたい。ちなみに、ここに書くことは、トラッド・クライミングを誰かにちゃんと教えてもらってやってる人にとってはごく当たり前のことかもしれない。僕は完全に独学でやってるので、当たり前の知識が備わっていない。主として自分のためのメモとして残したい。

3本のカムがスタックした状況、事後対応、事前予防策を順番に整理しよう。

ケース1:タイトセット


  • 状況

黄色のC4。タイトセットしたカムがスタックして、トリガーを引いても出てこないケース。これはトラッドをやってる人の多くが経験したことのある話しだと思う。

  • 事後対応

(1)スリングに輪を二つ作る(なんでもいいけど、ラビット・ノットあたりがいいかも)、(2)輪をトリガーに一つづつかける、(3)輪の反対側をハーネスのビレイループに連結する、(4)スリングにぶら下がってトリガーに全体重をかける。これが僕の定番の対応で、多分トラッド・クライマーはみんなやってる。

今回もこれで回収成功。

  • 事前予防策

タイトセットでスタックの予防策は、タイトセットしないこと。いうまでもない。しかし、カムの番手の中間サイズのクラックで、タイトセットするか、ゆる目にセットするかは悩みどころ。僕はかつて、「スモールカムについては常にタイトセットなんだけど、ハンド以上になるとユルユル」という指摘をいただいたことがあって、大きめのカムのセットは気をつけるようにしていて、それで今回のような事態になったというわけ。個人的な感覚としては、ユルユルでカムが抜ける心配をするより、タイトにセットして安心した方がいい。タイトセットでスタックしたカムは多分上記の方法で大抵回収できるから、問題なし。スタックを恐れずブチ込むのが正解。


ケース2:ルーフの抜け口


  • 状況

緑(か黒?)のマスターカム。ルーフの抜け口にセットしたカムがウォーキングで奥に入っちゃったケース。今回は随分奥に入って、カラビナまでクラックの中に吸い込まれ、しかもクラックはシンハンド・サイズで、ロープのアンクリップさえ危ぶまれたくらい。

真ん中のカムが奥に入っちゃった

  • 事後対応

奥に入ったカムは、緩めのセットだった。奥に入りすぎて、クラックに手が入らず、一本目と同じスリング・メソッドは使えなかった。そこで、スリングの先にカラビナを一枚つけて重りにして、それをクラックの中のカムのさらに奥を目がけて投げ入れた。そしたら、狙い通りにスリングがカムローブに引っかかって、カムはポロっとルーフの下に抜けてきた。

  • 事前予防策

リード&フォローの時はこのケースが起こるとフォローが登れなくなるので、事前予防がとても大事。

ルーフの抜け口のカムが奥に入るのは、その部分でロープが屈曲していて、ロープが上に引かれるたびにウォーキングするから。



予防策(1)としては、この屈曲の角度をなるべく少なくするために、ルーフ下のプロテクションを延長するとか、セットの位置を下げるとか。そうするとそこまで奥には入らないような気がする。


予防策(2)としては、ロープの動きを少なくすること。ロープの動きが激しいと、屈曲部のカムが大きく振られてウォーキングしてしまうので、ルーフを超えたらクリップ時のロープの引き込みはソフトに。少しは予防になりそうな気がする。しかし、落っこちそうになりながらクリップするときにそんな配慮ができるかは知らない。あと、リードの最中にはウォーキングしなくても、フォローが登ってる最中にウォーキングする可能性もあるから、フォローのビレーも張りすぎないようにした方がいいかもしれない。しかし、フォローが怖い思いをしそうだから、判断が難しい。

ケース3:1本目のカム


  • 状況

青のマスターカム。1本目のカムがウォーキングで奥に入っちゃったケース。トリガーがクラックの中に入っちゃって、フィンガーサイズだからトリガーを引けず、回収不能。これも多分、トラッドをやってる人は一度は経験したことのある良くあるやつ。



  • 事後対応

色々やろうとしたけど、結局回収できなかった。初めてのカム・ロスト。ナッツキーがあればなんとかなったかもしれないけど、離れた場所に置いてきちゃってたので使えず、断念。無念。

  • 事前予防策

ウォーキングの原因はロープが屈曲することなので、予防策(1)はもちろん、ビレイヤーが1本目のカムと2本目のカムを結ぶ直線上に立つこと。しかし、諸々の事情でそれができないことはよくある。レッジに上がってスタートとか、落石の恐れがあって離れてたいとか。

予防策(2)は、ケース2のルーフの抜け口と同じで、クリップするときにロープをソフトに引き込むこと。それができるかどうかは知らない。

予防策(3)は、カムのウォーキングが起こりやすい1本目のプロテクションにはカムを使わないこと。ここでナッツは最悪で、ロープの屈曲部ではいともたやすく抜ける。ジッパリングっていうのかな?やはり、カム効果のあるプロテクションでないといけない。そこで考えられるのが、トライカム。カム(というかスプリング・ローデッド・カミング・デバイス)と違ってウォーキングはせず、ナッツと違ってパラレルでも効く。

1本目のプロテクションはトライカムでいこう(効果は保証しません)。

考察は以上。ひとまずの仮説であって、正しいかはわかりません。コメント歓迎。

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