2019年11月12日火曜日

ボブ・マーレー・エクステンションを登った

この夏の終わりの記録。

日曜日から1週間のロンドン滞在が始まるということで、金曜日にはボブ・マーレー・エクステンションを登りに行ったが、ミッジーズに襲われて退散してきた。やむを得ない、しばらくクライミングはお預けだ、と思っていた土曜日の朝。予想外に気温は低く、強い風が南から吹いていた。

ボブ・マーレーのあるカウパー・ストーンは、ミッジーズの溜まり場だ。ミッジーズは夏場に現れる極小の吸血の羽虫で、どこからともなく大量に現れて人を襲う。あまりに数が多くて次から次に襲いかかってくるので、叩き落として撃退することはできない。夏の岩場でミッジーズを避ける唯一の方法は、風の強い場所を選ぶこと。

南向きのカウパー・ストーンにとって、南風は絶好の条件だ。しかも、太陽は薄い雲の後ろに隠れていて、気温もほどほど。これは行くしかない。

カウパー・ストーンは、Stanage Edgeというエリアに位置する。Stanage Edgeは3キロだか4キロだか知らないけど端から端が見えないくらい長大な岩壁が続くエリアで、ものすごい数のルートが設定されている。そんな長大なエリアの端の端にある牛の糞みたいな形をした岩が、カウパー・ストーン。

高さ10mくらいのカウパー・ストーンには水平のフレアした巨大なクラックが数本走っていて、その一番下のクラックを左から右にトラバースするのが、Zippatrocityという課題。この課題の後半はジャミングを駆使するクライミングだが、前半はフレアしたクラックが太すぎてジャミングはできず、スローパーをペシペシ叩くリップトラバースになる。Zippyというニックネームをもつクライマーが初登したクラシック課題だ。この動画を見れば、なんとなく雰囲気はわかってもらえるんじゃないかと思う。

 

このZippatrocityを逆流し、ついでにスタートにケービングを付け足す課題が、The Bob Marley Extention。初登は2007年、ワイド・ボーイズのトム・ランドール。

https://www.ukclimbing.com/logbook/c.php?i=468613

スタートのケービングは、これまで数々の岩と岩の隙間に挟まってきた経験がバシッと決まって、簡単だった。前半のクラック・トラバースも即日解決。トムさんは、左→右トラバースのZippatrocityより難しいとコメントしているが、特に問題なし。気づいたのは、水平クラックのハンドジャムは吉田式が圧倒的な威力を発揮すること。虫様筋ジャムとは大違い。

中間部のスローパー・パートもムーブは問題なし。ただ、クラックからトラバースへの繋ぎでかなり苦労した。この動画の4:15のところで、トムさんは右手クロスでフィンガーを刺しているけど、これが僕の短い腕ではとても厳しい。トムさんのクロス一手で済むところを、5手を繋いで行ったり来たりを繰り返すことで解決した。ここのムーブを発見できたことで、課題の解決に向けて大きく前進することができた。



残るは最終局面。中間部後半のカンテを回り込んで、凹角に入って、そこからフィニッシュまで。ここもまた、吉田式ハンドジャムが水平クラックで威力を発揮した。あと数手で終わり、両腕がパンパンに腫れてどこまでいけるかという局面で、うまくいけがジャムで完全に脱力したレストができるというムーブを発見した。もっとも、非常に不安定な体勢からクロスでジャミングをキメることを要求されるので、最終的には確実にジャムをキメてレストすることは諦め、一瞬キマったジャムでごまかして先に進むことになったが。さらにその先でも、吉田式ジャムが圧倒的な優位性を示し、核心部である後半部を大いに楽にしてくれた。

この課題とはたくさんの時間をかけて向き合った。クラックからスローパーへの繋ぎのムーブ、後半のパンプの処理で大いに悩んで、ムーブを確実にものにしようと練習を繰り返し、その度にミッジーズに襲撃された敗退を繰り返した。最終的には、強い風と雲の力を借りて、ムーブを洗練させることは諦めて、勢いで押し切った。

この課題のグレードは7C。この数字を額面通りに受け止めれば、7B+を登ることなくグレードを更新したことになる。しかし、吉田ジャムを知ってしまえば、そこまでの難易度にはならないだろう。何を基準にグレードをつけるかという話になってくるので、数字には意味はなかろう。多分ワイドボーイズの二人くらいしか登ってないからグレードは未確定だろうし、これからも登る人はいないだろう。でも、こういう課題と向き合って自分のクライミングができることは、とても嬉しいことだ。

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