2020年5月3日日曜日

Pete Whittaker著 CRACK CLIMBINGを読もう(1) -写真を眺める-

CRACK CLIMBINGというクラック・クライミングの技術書が出版されました。20201月のことです。著者は、Pete Whittaker。言わずと知れたWideboyzのひとりで、世界有数のクラック・クライマーです。ピートさんは、広いのはCentury Crackから、細いのはRecovery Drinkまで、あらゆる幅の高難度クラックを登っています。

 

出版社は、Vertebrate Publishing。シェフィールドに本拠を置き、アウトドア関連の書籍を精力的に出版しています。クライミングに関しては、例えばJerry MoffattRevelationsとか、Ben MoonStatementとか、Peak Districtのクライミングを総覧するPeak Rockとか、Peak District Boulderingというボルダリングのトポとか。フリー・クライミングだけじゃなくて、マウンテニアリングとか、トレイルランニングとか、マウンテンバイクとかの書籍も手掛けていて、アウトドアに関してはUKで最も勢いのある出版社と言えるでしょう。

 

そのVertebrateとピートさんが手を組んだCRACK CLIMBINGには、実はUK版とUS版があります。それぞれに副題がついていて、UK版はMastering the skills + techniquesUS版はThe definitive guideです。クラック・クライミングをマスターしたピートさんが知りうる限りの技術を言語化し、多数のイラストで図示して解説するこの本は、まさにクラッククライミング技術書の決定版といった風格を備えています。ちなみに、表紙の文字が白いのがUS版で、オレンジがUK版。中身は多分一緒。

 

 

さて、CRACK CLIMBINGはクライミング技術のdefinitive guideというだけあって、その内容は詳細かつ多岐に渡っています。ですから、この本をひとりで最初から最後まで通して読むのはなかなか難しいでしょう。買ったは良いものの通して読めていないという人も多いでしょう。また、この本の存在は知っているけど、そこまで詳しい解説を理解できるか自信がないから買っていないという人もいるでしょう。それはとてももったいない。なぜなら、CRACK CLIMBINGは、クラック・クライミングの上級者だけではなく、初心者や、さらにはクラック・クライミング未経験者でさえ楽しめる、素晴らしい本だからです。

 

そこで、このブログでは、数回に分けて、CRACK CLIMBINGの楽しみ方をご紹介したいと思います。第一回のテーマは、「写真を眺める」です。

 

CRACK CLIMBINGには、世界中のクラックとそれを登るクライマーの姿をとらえた写真が多数掲載されています。この本を楽しむ第一歩として、まずはその写真を眺めてみましょう。そして、クラックの走る岩とそれを登るクライマーの美しさを堪能しましょう。岩と岩が置かれたロケーションの美しさに息を飲むこともあるでしょう。クライマーの表情に共感することもあるでしょう。信じられなような技術に頭を抱えることもあるでしょう。

 

気になる写真があったら、ルートの名前をググってみましょう。「ルートの名前 climbing」で画像検索がおすすめです。そのルートの全貌や、ルートにまつわるストーリーに出会うことができるかも知れません。

 

以下では僕のオススメをいくつか紹介します。

 

まずは、25ページのComes the Dervish。北ウェールズの石切場のクラックです。黒いスレートに走る一本の筋。点々と残る白いチョークの跡が、このクラックの人気を物語ります。初登は1981年、初登者はStevie Haston。以下のウェブページでは、声に出して読みたいダルビッシュの記録を発見することができます。

https://www.ukclimbing.com/articles/features/comes_the_dervish-12131

 

 

次は68ページのSeparate Realityを登るBarbara Zangerl。登っているのは、言わずと知れたヨセミテの超人気ルーフ・クラックです。ジャミングをきめるバーバラの両手に注目しましょう。手がほとんど入っていません。核心のシンハンドサイズ。ジャムはどのくらい効くのか?クラック・クライミングの経験のある人なら、そこに行って手を差し込んでみたくなること間違いなしです。Separate Realityの動画はyoutubeに大量にあります。そのいくつかを見比べて、登り方の違いを考えると、とても勉強になります。

 

一枚めくって、フィスト・ジャムをねじ込むクライマー。この顔が全てを物語っています。

 

110ページ。最高に楽しいクラックのムーブであるリービテーションの名前の由来となったRandy Leavittが狭いコーナーで岩に全身を擦り付ける姿。最高ですね。

 

137ページでは、light bulb changerというテクニックを繰り出すクライマーの姿を見ることができます。このテクニック、どのくらい効くんでしょう?

 

SquamishThe Shadow。両手パーミング&両足ステミングでコーナーにへばり付くクライマーは、158ページ。次に動かすのは、どの手、どの足?

 

190-191ページの見開きでど迫力の写真は、ヨセミテはエルキャピタン、Salatheのヘッドウォールです。

 

210ページには、UK最難クラスのルーフのオフウィズスであるRay’s Roofを登るMari Augustaさん。女性初登ですが、その理由は彼女の両手の形状を見れば理解できるでしょう。ハンド&フィストのリービを決めるその小さな左手は、大きく「くの字」に曲がって最大限に膨らんでいます。今にもすっぽ抜けそう。腰はまだルーフの下に引っかかっていて、右足で踏むフットホールドも乏しそう。いったいどうやってここから体を引き上げるというのでしょうか?

 

ということで、まだまだありますが、素晴らしい写真の一部を紹介しました。皆さんも、

ENJOY!

 

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