2016年3月2日水曜日

フィンガージャムのテーピングに関する試論

エブリデイ・ジャムジャムで練習中のフィンガージャム。今のところ、テーピングなしでやってます。テープすると、感触が変わるので、ジャムが効く感覚を理解するまではテープなし。ジャムの感覚を習得できたら、テープを使うことがあるかもしれません。

と考えていたところで、フィンガージャムのテーピングについてS條さんから問題提起があり、また、ストレニュアスなフィンガークラックでは指の保護も重要との指摘を受け、僕も考えてみました。

1 フィンガージャムのテーピングの条件

フィンガージャムのテーピングには、ハンドとは異なる困難さがあります。幾つかの条件を満たさなければなりません。
  1. ズレないこと
  2. 指が曲がること
  3. 皮膚の柔軟性が失われないこと
  4. フリクションが失われないこと
  5. 指が太くなりすぎないこと
  6. めんどうでないこと
といったあたりでしょうか。難しいのが、これらの条件の幾つかはトレードオフの関係にあることです。順番に見ていきましょう。

1-1 ズレないこと

当然ですね。テープがずれるときまったはずのジャムも外れてしまいます。最優先で確保すべき条件です。

1-2  指が曲がること

これはとても重要です。吉田さん方式のフィンガージャムは、第一関節と第二関節を曲げることを要求します。この二つの関節が曲がらなければ、ジャムは効きません。

この点において、フィンガージャムのテーピングについての数少ない情報であるSteph Davisさんのテープ法には注意が必要です。以下の動画の後半で、フィンガージャムのテーピングの方法が解説されています。



Steph Davisさんは、血行がなくなるくらいreally tightに巻けと言ってますが、確実に指が曲がらなくなります。また、条件3である皮膚の柔軟性も失われます。それだと、吉田さん方式の第一、第二関節を曲げるフィンガージャムは無理です。Stephさんのフィンガージャムは吉田さん方式とは別の流派なのではないかと思います。

指を伸ばした状態で普通にテープを巻くと、指は曲がらなくなります。指が曲がるようにテープするためには、指を曲げた状態でテープすることが有効です。そうすると、皮膚の柔軟性も失われません(条件3)。ただし、指を曲げた状態でテープを巻くと、テープにシワがよります。これによって、テープがずれやすくなってしまいます(条件1の不適合)。また、できるだけシワがよらないように指を曲げた状態でテープを巻くためには、テープは細いものでなければなりません。細いテープを重ねて貼るため、指が太くなってしまいます(条件5の不適合)。

1-3 皮膚の柔軟性が失われないこと

吉田さん方式のフィンガージャムは皮膚で効かせることが強調されます。Stephさんのようなきついテーピングは、皮膚の柔軟性を失わせ、ジャムの効きを悪くします。

1-4 フリクションが失われないこと

テープをすることには本質的な問題があり、それは、テープは素肌よりフリクションがないことです。フリクションがないと、ジャムは抜けやすくなります。テープをするのであれば、フリクションを確保する方法を考えないといけません。

ただし、テープの上に糊を塗るような方法はズルをしているような気がするので、素肌よりも高いフリクションを求めることには問題があるかもしれません。

1-5 指が太くなりすぎないこと

指にテープを巻くと、指が太くなります。指が太くなると、テープがなければ指が入るはずの細いクラックに指が入らなくなります。指が曲がるように(条件1)細いテープを重ねて巻くような方法だと、なおさら太くなってしまいます。

もちろん、指が太くなることは、時には望ましい結果をもたらすこともあります。例えば、スカスカのオフフィンガーが、テープで指が太くなることによって第二関節ボンバーになったり。ですから、一長一短です。

ここでもまた、オフフィンガーが核心ムーブのクラックだからとテープを厚めに巻くようなことがあると、ズルをしているような気になりますので、注意が必要です。

1-6 めんどうでないこと

これも重要な条件です。岩場でめんどうなことはやってられません。RP狙いの1トライのためならやってもいいですが、日に何度もトライするような時は、ずれて張り替える必要が生じることもありそうです。そう何度もやってられません。指が曲がるように(条件2)かつ、シワがよってずれることのないように(条件1)テープを巻くことはとても骨の折れることです。


2 対応の基本方針

以上の諸条件の中で、指が曲がること(条件2)と皮膚の柔軟性が失われないこと(条件3)は相互に矛盾するものではなく、とても重要な条件です。そして、この二つの条件を満たすようにすると、テープにシワがよってずれやすくなり(条件1の不適合)、できるだけシワがよらないように細いテープを使うと重ね張りで指が太くなり(条件5の不適合)、テープを巻くのがめんどうにもなります(条件6の不適合)。

ということで、ボトルネックは、指が曲がるようにテープを巻くとシワがよるという点にあります。これは伸縮性のあるテープを貼ることで全面解決です。幅広の伸縮タイプのテープをバシッと豪快に貼って、終了。楽ちんです。

使うテープは、ひとまずバトルウィンのテーピングテープELでやってみました。エブリデイ・ジャムジャムでためしたところ、なかなかいい感じです。


3 テープの方法

具体的な方法は、以下のとおりです。

3-1 テープの幅

バトルウィンのテーピングテープELは、50mmか75mmしかありません。75mmは太すぎて話になりません。50mmでは短いです。そこで、半分に割った25mmを第一関節に巻き、第一関節と第二関節との間で適度に重なるように、50mmを第二関節から指の根元まで巻きます。35mmか40mmのテープがあるといいのかもしれません。工夫の余地ありです。第一関節ジャムが出てこないルートであれば、50mmを第二関節に巻くだけでいいと思います。

3-2 巻き方

テープを巻く際には、指が太くなるのを防ぐために、指の脇から巻き始め、巻き始めの部分を少し通り越して、同じ脇で終わるようにします。関節の上と下は二重にならないように。関節を軽く曲げながらテープを巻きます。テープを巻くときに関節を完全に曲げなくても、伸縮性があるので指は曲がります。シワにならないようにするために、関節部分はテープを軽く引っ張って巻くと良いです。どちらの脇から巻き始めるのが良いかと、右巻きか左巻きかも、指によって異なると思います。検討の余地ありです。

3-3 フリクションの確保

クリアできていなかった条件の一つが、フリクションです。バトルウィンのテーピングテープELは、一般的にクライマーが使っている非伸縮タイプのテープに比べると、多少フリクションが良いように思います。

そこからさらに、テープのフリクションを上げる技術を導入します。テープを水で湿らせると、フリクションが増します。この技術を導入するためには、テープに撥水性があってはいけません。撥水性のないタイプのテープを選びましょう。


4 残された問題

なかなかうまくいっていると思うこの方法ですが、幾つかの問題が残されています。

4-1 指が太くなる

バトルウィンのテーピングテープELは、一般的にクライマーが使っている非伸縮タイプのテープに比べると、厚手です。重ね張りしないとはいえ、指が太くなります。この点は、今回の方法の最もクリティカルな問題かもしれません。特に第一関節ジャムでは影響が大きいような気がします。どの程度影響があるかは、もう少し実験を繰り返して判断する必要があります。

この問題は、より薄いテープを探すことで改善できるかもしれません。候補はあるのですが、入手が少々大変そうです。手に入ったら実験して報告します。

4-2 ずれないのか?

テープの最も大事な条件は、ずれないことでした。バトルウィンのテーピングテープELは、木枠のエブリデイ・ジャムジャムでは、ずれません。花崗岩の結晶が食い込むようなクラックではどうでしょうか?厚みがある分、結晶の食い込みには弱いかもしれません。実地投入で実験する必要があります。


5 まとめ

以上、フィンガージャムのテーピングについて考えてみました。伸縮性のあるテープを巻くことでほとんどの問題を解決してしまうという、非常に大雑把な対応でしたが、一応の解決にはなっているように思います。本物のクラックで試してみて、また報告します。


追記
ガビガビの岩だと結晶が食い込んでずれてしまい、全然ダメでした。大失敗。

0 件のコメント:

コメントを投稿