センチュリー・フォー・カラーズ 5.12b
僕がセンチュリーのことをはじめて知ったのは、今からおよそ3ヶ月前のこと。今年の2月、RP間近のロジャーさんがブログに書かれた情熱的なトライの記録を目にした時でした。いや、正確に言えば、僕はロジャーさんのブログを前から読んでいたし、吉田さんのブログも前から読んでいたので、そのずっと前からセンチュリーのことは知っていたはずです。しかし、自分のクライミングの対象として明確に意識したのは、この時でした。この頃僕は、フィンガージャムを学び始めたばかりでした。
もともと僕はワイドクラックが好きで、ワイドを上手くなりたくて、クラックといえばワイドで、フィンガーには興味がないと言っていました。ところが、昨年10月末に八千穂高原ボルダーへ行った際に、一緒に行ったダイバーさんがフィンガークラックにビシバシとジャムをきめているのを見て、衝撃を受けました。対照的に僕は、フィンガージャムのやり方が全く分からず、気持ちに反して観音開きになったり、レイバックでごまかしたり、ジャムが効かずに諦めて降りようとしたら外れなくなったり。散々でした。フィンガージャムもできた方がいいと、その時思ったのでした。
多方面からのオススメもあり、吉田和正さんの講習に参加したのが12月初旬。湯川でのはじめての講習参加は悲惨なものでした。吉田さんは懇切丁寧に教えてくれるのに、頭では理解できたつもりになるのに、実際に岩の割れ目に指を突っ込んでみると、全くジャムが効く感触を得られません。さすがにこれはショックでした。
なんとかうまくなりたいと思ったものの、すでに季節は冬。奥多摩のシーズンです。奥多摩にはフィンガークラックはないのです。苦肉の策で考えたのが、クラックを作ってしまうこと。1月中旬、木製のクラックを自作し、自宅に設置しました。もちろん、この時、ワインセラーにワイドクラックを製作してセンチュリー・クラックに向けたトレーニングに取り組んだワイド・ボーイズからインスピレーションを得たことは言うまでもありません。
自作のクラックマシーンで練習を積み、二度目の吉田さん講習を経て、フィンガージャムに多少の進歩を感じた頃に目にしたのが、ロジャーさんによるセンチュリーへの挑戦の記録でした。センチュリーのことを少し調べて、すぐにこれだと思いました。吉田さんが「東洋太平洋級」とまで言う美しいクラック、ひたすら続くフィンガージャム。個性的なボルダー開拓をされているロジャーさんがここまで惚れ込むクラックならば、その魅力には間違いがあるはずがありません。センチュリーをフィンガークラックの最終目標として、フィンガージャムのトレーニングに取り組むことにしました。
初めてセンチュリーに触れたのは、3月下旬。SJさん、ロジャーさんにご案内いただき目にしたそのクラックは、本当に美しいものでした。トップロープで、ムーブとプロテクションをたっぷりレクチャーしてもらい、良い感触を得て帰ったのでした。二回目からはプロテクションをセットしながらリードでトライを開始。センチュリーに触れる直前にガメラさんの日記を読み、より充実する取り組み方で挑みたいと考えたからです。
4月は2回の週末を、5月は登れるまで4回の全ての週末をセンチュリーで過ごしました。そして、7日目、センチュリーを登ることができました。安江さん、ロジャーさん、バッタ先生に続く第4登のようです。
心の底から嬉しかったです。もちろん、決して他人に誇れるスタイルではありません。トップロープで練習し、ムーブを教えてもらい、プロテクション・セットを教えてもらい、ペラペラに薄くなって細いクラックに潜り込むシューズに頼り、専用のノートを作ってまでして詳細なメモを残し、記憶の薄れないよう毎週末トライを繰り返し、ティックマークを連打し、数年ぶりの減量までして登っています。ソロで登ったバッタ先生とは比較にならない軟弱さです。でも、このクラックの前では、僕にとっては、スタイルは問題ではないです。半年前はこれっぽっちも効かせることができなかったフィンガージャムをバシバシきめて、美しいこのクラックを登りきったこと、それだけが価値のあることです。
グレードは5.12bということですが、僕には全く理解できません。これまでに僕が登ったフィンガークラックは、メゴスとメゴスライトの2本だけですから。比較の対象がありません。僕の指は平均的なクライマーと比べるとかなり細いので、細いクラックには有利です。出だしのムーブも、中間部のレストの体勢も、高い身長と長いリーチが有利に働いていそうです。クラックのグレードは、スポーツルート以上にフィジカルな条件に左右されそうです。
このクラックを登ることでたくさんのことを学びました。同時に、課題の残る経験でもありました。プロテクションのセットがヘボすぎます。多彩なカムのセットは、SJさんに教えてもらわなければ、全く対応できなかったでしょう。多様なジャミングについても同じです。下部のオフフィンガーは、相変わらず苦手です。足元のカムでフォールすることに依然として恐怖感があります。限界に挑む心を整えることができなかった日もありました。
フィンガーの最終目標として定めていたセンチュリーは登れましたが、まだまだ進歩しなければなりません。
ただ、今あるのは、センチュリーを登れた喜びと、センチュリーを発見してくれた吉田さん、初日に案内していただき何もかも教えてくれたロジャーさん・SJさん、ビレーしてくれた松氏・konさん、そして応援してくれた仲間への深い感謝と、それだけです。
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